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「覚えてないみたいですよ。ヨンジェ君にした事。」
「そうなんですね……ヨンジェ君にも心のケアが必要ですね」
ジニョンさんは深刻そうな顔つきで俯いた。無理もない。ヨンジェ君は何度も傷つけられていたのだから。心も、体も、全て。応接室には重苦しい雰囲気が漂っている。
「はい……でもジェボムを見つけてくれてありがとうございました。ずっと彼の事が気になってたんです。」
ジェボムと俺は大学の時、医学部に所属していた。その中ではまぁまぁ仲が良い方だったと思う。俺は精神科医になるために勉強をしていた。ジェボムが何を目標に医学部に入ったのかは、よく分からなかった。それにその中では、話す方だったかもしれないが、あまりプライベートな話はしなかったように感じる。
「いえ、僕の方こそ色々な条件があるのに、彼らをこの病院で診てくれてありがとうございます」
ジニョンさんは深々と頭を下げる。彼は相当な努力をしてジェボムを見つけたのだろう。きっと彼にはそこまでしてもジェボムを見つけ出したかった理由があるのかもしれない。
「大丈夫ですよ。気にしないでください。それに僕たち同い年なんですからもっと気楽に話しましょう?」
ジニョンさんとも、色々と話していかなければいけない。少しだけ彼も情緒不安定なところがありそうだから。
「では、これからはそうしますね。
本当にありがとうございます、マークさん」
出されていたお茶を飲むことは無く、彼はスーツを腕にかけて応接室をあとにした。
それにしても、ジェボムの過去をジニョンさんに聞いたときは動揺を隠せなかった。大学時代からどこか掴めない雰囲気をまとっていたジェボムだったが、きっとそれはその過去のせいだろう。
今彼らは偶然に偶然が重なり合っている。
驚くほどに。現実とは信じられない程に。
彼らは、いやジェボムは、何故ここまで不幸なのだろうか。彼が今までに何をしてきたというのだ。彼らの絡まった糸は解くことができるのだろうか。自分のしたことに気がついたジェボムはどうなるのだろうか。
……自分の実の弟を痛めつけていたと知った時、
彼はどうなるのだろうか。
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