つまらない毎日を送っていたユギョムに転機が起きたのは、高校入学後、1ヶ月過ぎたくらいの頃だった。
学校には一際目立った存在がいたのだ。それは学校1の美男子と言われている、マークだった。なぜ目立っているのかというと、そのルックスもあるだろうが、何せやっている事が目立つ目立つ。
校則は守らないし、すぐ授業はサボる。
彼はまるで、ユギョムと真逆であった。
親は離婚、全くマークには興味を示さなかったため、どんな時間に家に帰ろうが、何をしようが、何も干渉されなかった。良く言えば自由だが、悪く言えば親からの愛情を十分に受けることができていなかった。
そしてもう一つ。彼は裕福でなかった。だが、頭が良かったため、公立ではなく私立の特待制度でここにきたのである。未だに成績優秀、その上スポーツもできるため、少しの悪さは先生たちも目を瞑るのだ。
彼にできないことはほとんどなかった。
「ジャクソン、ジェボム、ジニョン学食行こー」
「おう!飯飯!!」
そしていつも隣で騒がしいのがジャクソン。マークと学校の中では最も仲が良く、マークの事情を全て知り、理解してくれる人だ。
「今日は何にするの?」
常に冷静沈着、落ち着いているのがジニョン。ジャクソンとは全く対照的だ。そして黙ってついてくるのがジェボム。彼はかなり無口だ。自分の好きなことになると情熱を注ぐが、それ以外は興味なしといったところだろうか。
性格が全く違うはずの四人だが、
いつの間にか仲良くなっていたらしい。
カフェテリアに行くと、何故か人だかりができていた。マークは何か気になってそちらを見ると、その奥にユギョムの姿が見えた。
「なんだあれ?」
ジャクソンは目をひん剥いてそちらを見る。
「ほら、えーっと、キムユギョムだよ。」
「あぁ!あの大企業の息子の!」
「そうだったねー」
マークはユギョムの事があまり好きではなかった。話したことも無ければ、声も聞いたことも無いけれど。
この学校は金持ちが多いが、特にユギョムは裕福な生活を送っていて、何不自由ない生活を送って来たように見えたからだ。
今まで苦労してきたマークにとって、それが気に食わなかった。
その人だかりをよけようと思っても、食堂のカウンターにはたどり着けない。仕方なく彼女たちにはとっておきのキラースマイルを向ける。
「ちょっとごめん、通りたいからどいてくれる?」
その声を聴いた途端にザァっと開く道。ありがとう、と一言言ってその道を歩く。ユギョムはマークに向かって小さな声でお礼を言った。
中等部から入って来たばかりの割には高い身長。ふわふわしている髪の毛、少し幼さが残る顔立ちだが、整っている。そんなユギョムを見て、一瞬マークは立ち止まったが、いいえ、と素っ気なく返事をしてスタスタとその場所を去る。
この瞬間に、ユギョムは妙な気持ちになった。
変に鼓動が高鳴り、息が苦しい。
「どうしたの?ユギョム?」
べムべムは不思議そうにユギョムに問う。
「あ、ううん、何でもないよ」
べムべムとヨンジェは顔を見合わせ不思議そうに首をかしげたが、ま、いっか。と、今日食べるランチセットを選びだした。
ユギョムはその感情の発端が何か知らない。
そしてその感情の事を何と呼ぶのかも。
彼にはまだわかるはずが無かった。