西川純(上越教育大学)教授のこと | 富士市議会議員 鈴木幸司オフィシャルブログ Powered by Ameba

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西川純先生とは4年前の自治政策講座でお会いし、先日ひょんなことからfacebookで友達になり、現在悩みのタネとなっている市立高校商業コースの定員割れについて相談したところ、「これからは職業高校の時代ですよ」と言われました。なるほど、そうかもしれない。
以下、当時の講義録を掲載します。

第1講義「問われる教育行政」

 西川純 上越教育大学教授

【5%の子供のアクティブラーニングと95%の子供のアクティブラーニング】

 

・アクティブラーニングとは『学び合い』のこと

  私の話は、教育界の権威に毛嫌いされている。彼らの権威の根源、つまり今までの記憶力中心の学習方法を否定する事になるから。

  『学び合い』が何故必要か。日本は中進国のトップランナーであって、先進国ではない。所謂「ものづくりの国」とはそういうもので、「マニュアル人間」や「丸暗記児童」を量産することで先進国をキャッチアップしてきた。そして今、中国・インド等の後進国の追い上げを受け、ものづくりでは食えない時代がやってきた。だから日本は今後、先進国の仲間入りをしなければならない。先進国の子供はどう育てられるのか?それが5%のアクティブラーニング。つまり新しい発明やビジネスモデルを構築することで、世界に貢献する、そんな5%の才能を伸ばしていく・・・そんな教育。

 

IVリーグのような大学を日本に

  先進国に求められるのは、新たなものを作り出す能力。学習現場では平等である必要はない。必要なのは公正さ。進める子はどんどん進ませる。トップ5%の子供たちが自ら学ぶ事を自覚する教育。そして、自分が理解したことを他人に理解させる能力を育てる。自分だけ点を取ればいい・・・そんな子が優遇されるのは「公正」ではない。だから『学び合い』が必要になる。人に教えて、初めて自分の知識となる。そんなIVリーグのような大学教育が日本にも必要だと文科省は気づいた。

  そこでは狭くても深い知識が求められる。文部科学省が目指すスーパーグローバル大学創生支援事業。教授を凌ぐ議論の出来る学生・・・指定されたトップ13大学が求めるのはそういう人材。だから受験方法も変わらざるを得ない。そしてついに昨年から東大の入試が変わった。

 

・今後、教育界は上から変わる

  東大が変わり、指定された日本のトップ13大学の入試問題が変われば、遠くない時期に全国のトップ高校の教育が変わる。「マニュアル人間」はトップ高校から排除されるようになる。

  トップ高校が変われば、それは今後全国の高校に波及する。そうなると中学校も変わっていく。「学習指導要領」も変わる。その時、文科省の目指すものが見えてくる。

  小中学校へのアクティブラーニングの導入。しかし、教育現場は「平等」にこだわり続ける。成功体験は中々捨てられない。

 

「この5%のアクティブラーニングを95%のアクティブラーニングにしましょう、というのが今日の講義のキモ」

 

 今、浪人する高校生は3%(受験戦争の時代の十分の一)。大学全入時代。しかし、大卒の学生の本当の就職率は70%(実は浪人率は変わっていない)  学生支援機構(育英会)の滞納率の発表によって本当の就職率が判る。

  卒業後、何時の間にか返済できずに、年収170万円以下の非正規雇用になる人が30から40%存在する。(大学が発表している就職率はウソである。近年では3年で3割の大卒者が離職する。3年ももたない・・・そんな表面的な「就職率」に意味があるのか)

 今後の日本企業の平均寿命はどんどん短くなる。例えば「10年倒産率」は20%、50年でほぼすべての企業は入れ替わる。今後は離職と再就職が当たり前の時代になる。必要なのはノウハウではなくノウフーやノウホワイ。

 

・必要なのはサバイバル能力。それが95%のアクティブラーニング

  学び合い、教え合いを進めようというならば、それを「つながり」「友達ネットワーク」へと一歩進めるべき。5%の天才候補たちは孤独な戦いを続ける。それが社会の要請ならば、茨の道を行くがいい。しかし、残った95%の学生にサバイバル能力を身につけさせることも大切なこと。

 

・一番大切なのは中学校。(郷土愛、あいつがいる、父母がいる)

  トップエリートではなく、地方にどれだけローカルエリートを集められるか。  地方に「ビルゲイツ」はいらない。20人にひとり、20人を雇える人を育てる。そうした人材が育つ地域は衰退しない。

 

※参考

新学習指導要領

 ⑴知識・技能

 ⑵思考力・判断力、表現力等の能力

 ⑶主体性を持って多様な人々と協働して学ぶ態度

 20163月文科省「3ポリシーの策定及び運用に関するガイドライン」