「専門家会議の判断」を検証する | 富士市議会議員 鈴木幸司オフィシャルブログ Powered by Ameba

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 上久保立命館大学教授が安倍首相の判断と「専門家会議」について論考を残した。
https://diamond.jp/articles/-/237578
安倍政権のコロナ対策に募る不信、問題の本質が「専門家会議」である理由

 
 安倍首相は5月25日の記者会見で「新型コロナ対策の総括、検証は」と聞かれた際、「おおむね収束したが、まだ検証という段階ではない」と答え、重ねて「政府として中間検証しないという事か」と念押しされ、「終わってからちゃんとやります」と返答した。
 科学とは飽くなき検証の連続だ。仮説を立て、実験を経て論文を世に問い、査読を受け、その批判に基づき新たな仮説を組み上げる。会社経営も同じだ。仮説を立て、実践し、資金を回収し、何故うまく行ったのか何故失敗したのか常に考えながら再投資する。そして、政治の本質は不断の検証と実践の中にこそあるはずだ。万人を納得させるような決断などは存在しない。英国はまず「集団免疫仮説」の上に立ち、その後Bプランに切り替え、その理由を国民に説明している。

 「終わってからちゃんとやります」という首相答弁には主語が無い。誰がちゃんとやるのか、どこか他人事のような、投げやりなものを感じた。本来なら「自分が必ず収束させる」という決意を示して良いはずだ。(どうしたんだろう、退陣も視野に入れているということだろうか)
 ともかく5月25日をもって、緊急事態宣言がすべて解除された。この間の専門家会議の動きを記そう。(日付のとなりにCOVID-19による死亡者数の倍加日数Dの測定結果を併記)
 
2月14日
 首相官邸の「新型コロナウイルス感染症対策本部」の下に専門家会議が設置された。この時点では、政府は事態をそれほど深刻に捉えていない。中国などからの入国禁止という強い措置を取ることはなく、感染拡大が過ぎ去れば、中国の習近平国家主席の国賓来日も予定通り行われ、東京オリンピック・パラリンピックも無事に開催できると考えていた節がある。
2月25日
 この日「厚労省・クラスター対策班」が発足。専門家会議設置から10日間が過ぎ、コロナの感染拡大が過ぎ去るのを待っていた政府が、事態の深刻さを受け止め、ようやく明確な新型コロナ対策に取り組み始めた。

2月27日
 新型コロナウイルス感染症対策本部で、全国の小中学校と高校に臨時休校を要請する考えを表明。期間は3月2日から春休み終了まで。
3月9日
 「専門家会議の見解」を発表。
 「みなさまにお願いしたいこと。これまで集団感染が確認された場に共通するのは、
①換気の悪い密閉空間であった、
②多くの人が密集していた、
③近距離での会話や発声が行われた、
という3つの条件が同時に重なった場です。 市民のみなさまは、これらの3つの条件が同時に揃う場所や場面を予測し、避ける行動をとってください」

3月13日

 改正新型インフル特措法成立。緊急事態宣言の発出が可能に。
3月22日
 さいたまスーパーアリーナで観客6500人というイベント。
4月1日 (D=15)
 専門家会議が「新型コロナウイルス感染症対策の状況分析・提言」を公表。(その中で初めて「三つの密」という表現が登場)
「オーバーシュート(爆発的患者急増)を生じさせないよう最大限取り組んでいく観点から、『3つの条件が同時に重なる場』(以下『3つの密』という)を避けるための取組(行動変容)を、より強く徹底していただく必要があります」
4月3日 (D=15)
 クラスター対策班が「西浦モデル」を公表し、国民に警告。
「早急に欧米に近い外出制限をしなければ、爆発的な感染者の急増(オーバーシュート)を防げない」
「このままでは死者40万人超」
4月7日 (D=15)
 7都府県に緊急事態宣言発出 

 

幾何級数的に犠牲者が増えると仮定(公比R=6.5%)した場合のグラフを示す。

グラフ-1

(データを取り始めた3/13から157日後には40万人超え)

 

4月14日 (D=11)

 死亡者数が100人を突破

4月16日 (D=7)

 緊急事態を全国に拡大

4月19日 (D=6)

 死亡者200人超過

4月22日 (D=8)
 専門家会議による「新型コロナウイルス感染症対策の状況分析・提言」発表。
 この提言から、今までの「三つの密が同時に重なる場面を避ける」という意味が変化し、三つの密は一つでも避けなければならないかのように変容。

4月24日 (D=9)

 死亡者300人超過

4月30日 (D=12)

 死亡者400人超過

5月4日 (D=12)

 死亡者500人超過

 

GW前までは予測線上を辿っているが、5/4(53日目)あたりから下振れし始める。

グラフ-2

 

5月7日 (D=16)

 緊急事態を5月31日まで延長

5月9日 (D=16)

 死亡者600人超過

5月12日 (D=18)
 「専門家会議」の上部組織である「基本的対処方針等諮問委員会」に、小林慶一郎・東京財団政策研究所研究主幹や経済産業省OBなど、経済の専門家4人が加わる。
5月14日 (D=19)

 39県で緊急事態解除
 専門家会議は「実行再生産数Rが0.7以下、東京都も0.5」と明言。

5月21日 (D=22)

 関西圏で緊急事態解除

5月25日 (D=25)

 関東圏・北海道も緊急事態宣言解除

 

76日後に死者2000人という予測を大きく下回っている。実測値は5月末現在予測値の半分以下で推移。倍加日数も5/28で28日まで延びており、実測値グラフの接線mの角度が水平になれば収束である。

グラフ-3

 

 最悪期は「犠牲者の倍加日数D=6」まで悪化した4月19日前後。
 COVID-19は、志村けんさんのように、発症して一週間以内に急激に重篤化する例が多い。
 そして感染から発症までの二週間を考慮すれば、実はこの4月19日の三週間前が感染のピークだったのだと考えた方が良い。(厚生労働省発表の感染者数のピークとは明らかな差異があるが、これはPCR検査数が少なすぎるせいだろう) 

 つまり、この時に「緊急事態宣言」を発しておく必要があったのではないか。(改正新型インフル特措法が成立したのが3月13日。さいたまスーパーアリーナでの大型イベントが行われた3月22日よりも前の発出であれば、関東圏のダウン日数を少なく抑えられ、その経済的損失を最小限に止められた可能性が高い)
 

以下、参考文献をいくつか。
 今後は、第2波に備えて
「3週間後のコロナ状況を予測できるDTチャートhttps://president.jp/articles/-/34348
の活用が有効ではないか。
 もう一つ。「グラフ-3」を見ると、京都大学大学院上久保特任教授らが提示した

「国民集団免疫説https://president.jp/articles/-/35711」にも一定の信ぴょう性があるのではないかという疑問が湧く。死者1000人に達した辺りで、日本人は集団免疫を獲得するのかもしれない。こちらの検証も待ちたい。