給与所得控除があるのに、政務活動費は必要か? | 富士市議会議員 鈴木幸司オフィシャルブログ Powered by Ameba

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・平成27年12月31日現在、全国の813市中713市が政務活動費を交付している。

  平成12年4月、地方分権一括法により、「議会活動の活性化を図る趣旨から、議員の調査活動の基盤を強化する等のため」に制度が創設された。地方議会でも、国会と同様に、議員報酬とは別に、政策の調査や研究のために必要な費用を支給すべきではないかという趣旨。これが旧政務調査費。平成19年度には、都道府県と政令指定都市の議員への交付分を合計すると政務調査費の総額は200億円に達した。

 

・「政務調査費から政務活動費への制度変更」は平成24年の地方自治法改正による。

  内閣提出案の原案では、地方議会の会期の変更、臨時会の招集権、再議制度、専決処分などの議会制度改革、直接請求制度の要件緩和、国による違法確認訴訟制度など、当時の事件への対応などの喫緊の課題を対象としたもの。その後、修正案に政務調査費の改正を追加。

 

・「24年改正の意味」

  平成24年改正は、平成13年から続いた政務調査費を政務活動費に名称変更。かつ、その交付目的に議員の調査研究だけでなく議員の「その他の活動」を追加した。  「議員の調査研究に資するため」というのであれば、議会内での議員活動に必要な立法や執行部の行政活動への調査費用に充てて質疑や条例案の立案などに役立てるという用途に限定されていることは明白。しかし「その他の活動に資するため」と改正されたことの立法意図は何か。  「その他の」は、それによって結びつけられる用語が全体と部分の関係にある場合に用いられるのであり、「議員の調査研究」という要素は、上位概念である「議員の活動」の主なものとして例示しているにすぎない。したがって、この改正により、その交付金制度の趣旨は、「議員の調査研究に資するため」から、「議員の活動に資するため」に支給するものに大きく変ったといえる。  だが、議員の活動とはいったい何なのだろうか。  活動とは、「活発に動くこと。ある動きや働きをすること」であり、単に「議員の活動」というだけでは、非常に広範で無限定なものを対象としていることになる。このままでは、「その他の活動」については地方公共団体がそれぞれどのように条例で定めるかに全てを委ねるしかない。

 

・地方議員は給与所得者。だから「給与所得控除」と「特定支出控除」が使える。
  会社を経営していた頃に頭を悩ませていたのは、税務署がどこまで必要経費を認めてくれるかという問題。一方、サラリーマンには「給与所得控除」がある。平成25年改正で「特定支出控除」の範囲の拡大が行われ、給与所得者の実額控除の機会が一気に大きくなった。(といってもまだまだ「使い難い」と不満の声があるようですが・・・)  特に大きな変更点は、判定基準が給与所得控除額の1/2にまで下げられた事。具体例を示す。 「教養としての所得税法入門」(2018年日本実業出版社)P106 にあるように給与所得者には、その給与を得るために自腹で負担した経費の支出が認められている。例えば年600万円の給与所得者には174万円の給与所得控除がある。その半分の87万円を超えた経費は、確定申告すれば戻って来る。研修費や、本代、通信費、スーツだってサラリーマンの必要経費として認められている。

 

 時々、議員報酬が高すぎるという批判に対して「議員活動にはお金がかかる」と反論する人がいる。しかし、お金がかかるのであれば申告すれば良いのだ。その上で「必要経費として認められるかどうか」は、個別に税務署と議論すればいい。  政務活動費で城崎温泉に年195回も要請陳情活動に行った県議がいたが、これだって、本人の信念に基づいて本当に必要な議員活動だと言うならば、「特定支出控除」が適用できるか税務署と争えばいい。市民に泣いて訴えることではない。

 

 政務活動費の一番の問題点は、自分たちに対する「補助金」を、自治体の条例で、つまり自分たちで決めているという事。だから各自治体によって使途がバラバラで統一されていないというおかしな状況になっている。  繰り返しになるが、国会議員とは違って地方議員は給与所得者なのだ。最初から税制優遇されている。平成25年の改定後、給与所得者の実額控除の機会が拡大されたことを機会に、この際、評判の悪い「政務活動費」は廃止したほうが良いのではないか・・・というのが今回の考察。