憲法に緊急事態条項は必要か | 富士市議会議員 鈴木幸司オフィシャルブログ Powered by Ameba

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【憲法に緊急事態条項は必要か(永井幸寿)】を読んで。
 例えば1990年から2008年までの間に制定された93ヵ国の憲法すべてに国家緊急権があるという意見があります。
 やっと憲法を制定したような国と日本のような近代国家を比較することには無理があります。
 そこで先進国だけに目を向けてみると、英米両国はマーシャル・ローに基づいて、つまり戦時特例として憲法を停止し権力を集中させる仕組みがあるとのこと。
 フランスでは「共和国の制度、国の独立、その領土の一体性あるいは国際協約の履行が重大かつ直接に脅かされ」「憲法上の公権力の適正な運営が中断される」場合に大統領非常措置権を発動できると定められています。つまり外国との戦争や武装反乱の場合だけです。テロは戦争や武装反乱ではないので、国家緊急権の発動要件には該当しません。
 唯一ドイツのみが、自民党が主張するような災害やテロ対策のために国家緊急権を定めていますが、ナチス・ドイツにより国家緊急権が濫用された経験から、この発動要件やその際の連邦政府の役割について厳格な規定で細かく定められており、むしろ災害やテロについては、日本の法律(再開対策基本法や国民保護法など)の方が、ドイツ基本法よりも政府に権力を集中させ人権を大きく制約するものとなっています。
 災害とテロにどのように各国が対応しているか表になっていますのでアップしておきます。
 また、ドイツでは「国家緊急権」と同時に「抵抗権」が創設されました。これは独裁者に対して、市民が抵抗して憲法を守らせる権利を認めたものです。これもナチスへの反省から生まれたものですが、我が国もかつてファシズムに蹂躙された反省から、「緊急事態条項」の導入と同時に「抵抗権」を憲法にきちんと書き込む覚悟が必要でしょう。
 しかし先進各国が憲法に国家緊急権を制定しているのはあくまで「戦争」に備えるためです。日本会議が主張するような「テロや災害」のおそれありとして憲法に緊急事態条項を加えるというのは無理があります。「戦争に備える」ことと「戦争放棄」は矛盾するからです。つまり、9条改正を経ずに「国家緊急権」の創設はありえないということです。
 こうした事実を知らずに「災害に備えて改憲が必要」だと主張する政治家がいるとすれば、それは少し恥ずかしいことです。憲法改正を争点とし、堂々と選挙に勝って、9条改定の発議をして国民に問いかける。それが正しい順番だと思います。