第3回市町村議会議員特別セミナーのこと その2 | 富士市議会議員 鈴木幸司オフィシャルブログ Powered by Ameba

富士市議会議員 鈴木幸司オフィシャルブログ Powered by Ameba

細野豪志サポーターズクラブ「豪衆会」は新規会員を募集中です。

--第3限--

「『社会保障・税一体改革』の動向」

講師:宮本太郎(みやもとたろう)北海道大学大学院法学研究科教授

 

キーワードは「殻の保障」と「翼の保障」。

これまでの日本はなぜ「小さな社会保障支出」で安定した社会を維持できていたのか?

高度成長という背景、そして一番大きな要因は「完全雇用」「護送船団」といった言葉に代表される「会社を潰させず、雇用を安定させる」社会構造にある。

ターニングポイントは阪神大震災。この年までは、まだGDP比6%の公共事業投資があった。そしてその後10年間で3%に半減。

土建国家と日本型経営の解体が本格化したのだ。

家族の形が変容し、晩婚化が進行し、2000年にかけて「経済的理由」による男性自殺者が急増した。

財源確保の失敗により、国と地方の債務残高は1000兆円に迫り、少子高齢化の進行によって、財政の持続困難ではなく、むしろ日本社会の持続困難へと移行しつつある。こども手当てをバラマキだと批判する人たちは、なぜ現在の年金制度を「老人へのバラマキ」だと批難しないのだろうか。世代間の不公平感は社会不安を増大させ、日本社会全体を不安定化させる時代へ突入した。高齢世代が現金給付を受ける・・・閉じこもりが可能な「殻の保障」はもはや限界である。

そこで「翼の保障」への転換が必要。

今までの日本の税金というのは「掛け捨ての保険」のようなものだった。

これを、負担を増やして保障を「使い倒す」構造に変えてゆく・・・それが税と保障の一体改革の本質。


では、掛け捨てではなく、返ってくる給付とは何なのか?

その答えは、「地域社会」の中にある。

返ってくる社会保障とは、参加する社会保障なのだ。

現役世代は雇用、高齢世代は社会保障という分業論から、現役世代支援の社会保障、高齢世代の雇用拡大という相互乗り入れへ。しかし、雇用機会の拡充と連動しないと「単なる給付減」に終わる。


高度成長期に、地縁・血縁が会社縁に吸収されて「無縁社会」に突き進んだ。

そのため、日本人は友人や仕事を超えた知人と会う機会が少ない。

これからは介護や保育などを巡る、つながらざるを得ない状況つまり「必要縁」言い換えれば「やむを縁」を形成することで、社会の安定化をはかって行かざるを得ないと教授は主張する

このまま何もしないと、社会不安が若者に「世代間闘争」の引き鉄を引かせることになる。

 

--第4限--

「福祉自治体の実践~みんなが笑顔になる支えあいのまちづくり~」

講師:谷畑英吾(たにはたえいご)滋賀県湖南市長

写真はこにゃん市長

 

第3限で学んだ理論(翼の保障)を「地域社会」で実践した・・・その実例がこの湖南市にある。

宮本教授の言う「高齢者の社会参加」を「障害者の社会参加」にまで進めた実験的な取り組みがこの「福祉自治体の実践」。

 

谷畑さんは、この財政難の時代、少子高齢社会到来のなかで果実の取り合いはやめようと「市はお金がない、使えるパイは決まっている」ということを説明して市長に当選してきた。お互いが協力し合えるところは協力する、支え合う関係が必要、みんなが納得をしながら進んでいく合意形成が大事だと訴える。

そして平成18年に、障害者と共に歩むという理念を「障がいのある人が地域でいきいきと生活できるための自立支援に関する湖南市条例」という形にした。

 

(市民の責務)

第4条1項 市民は、助け合いの精神に基づき、協力して障がい者が地域でいきいきと暮らせるよう積極的又はさりげなく応援することに努めなければならない。

 

「さりげなく」という、法律にそぐわない言葉に、手作り感を感じる。

湖南市は人口55000人、財政規模173億円という谷畑市長に言わせると「丁度いいサイズ」の街。

「お金で片付けるのではなく、市民一人ひとりが参加することで、福祉の充実は図れるのだ」という考え方に、「目からうろこ」がポロポロ。

近隣市町村の「福祉ただ乗り」を心配したが、谷畑市長は意にも介さず、

「湖南市の施策が良いと市外からたくさん転入されれば財政的に厳しくなる、ほかの自治体も同じことをやってもらえれば負担は分け合える」

と語る。

「福祉団体に呼ばれて話をしたときに『皆さんは企業や公共事業が敵と思ってはいませんか』と問題提起しました。今、市が進めている障がいのある人の就労についても企業の協力なくしてはありえません」

 

湖南市では幹部職員全員に企業への派遣が義務付けられている。

現場での経験が「協働」の精神の素地になっているのだ。

緊縮財政と福祉の充実は二律背反のテーマじゃない。

大事なのは「カネ」ではない。まちには「ヒト」という財産がある。

 

講義を聴いて、宮沢賢治の言葉を思い出した。

「秘密をひとつ教えよう。一番大切なものは、目には見えない」

富士市議会議員 鈴木幸司