私は、今でこそ一級建築士などと名乗っていますが、実を言うと元フリーターです。自転車好きが高じて、大学を卒業しても定職に就かず、自転車旅行ばかりしていました。
旅先で資金がなくなるとアルバイトで食いつなぎます。東京ではガス工事の飯場にもぐりこみました。そこは夜間工事専門でしたが、作業が長引くと、夜が明けてしまうこともありました。そうなるともう通勤、通学の時刻です。休憩時、歩道の隅でゴロ寝していた時、小さな子どもの手を引いた女性のヒソヒソ声が聞こえてきました。
「〇〇ちゃん、お勉強しないとあんな風になっちゃいますよ」
いやあ、お勉強して大学も出たけれど、こんな風になっちゃったんですよと苦笑いしました。本人は夢を追ってるつもりでも、世間から見りゃ立派な「ダメ人間」ですからね。
さて、毎週楽しみに見ていた「フリーター、家を買う。」が昨日終わりました。途中から原作とはだいぶ変わった展開になりましたが、テレビを見ていてすんごく気になっていたのが、
「オレ、土木の仕事しか出来ないから…」
といった言葉の使い方です。
建設工事現場を中心に話は進みますから、土木の仕事、土木の仕事と連呼されると、あれ?あの言葉は放送禁止用語なの…って思うわけです。
この「違和感」わかりますか。
これって原作者の有川さんの嫌いな「言葉狩り」じゃないのかな…
それが最終回、竹中直人さんが叫びます。
「お前をドカタにするために育ててきたんじゃない!」
お父さんは「差別的意図」をもって宣告していますが、いまどきのガテン系の若者達はドカタと普通に呼び習わしているんじゃないでしょうか。
日本では、江戸時代の昔から
土木を「普請」
建築を「小普請」
と呼んだように、
明らかに建築よりも土木のほうを尊んでいました。
「普請方(ふしんがた)」は古来、戦闘職種であり、
趣味の世界の「小普請」とは一線を画していたということです。
もう一人の主人公である香里奈ちゃんが、「橋ヲタク」だという設定も原作にはありませんでした。
土木のイメージアップのために、「巨大構築物」を持ち出したい意図はわかるのですが、土木って、もっと身近な「住宅の基礎」などから始まるものです。
「土方」をなめてもらっちゃ困ります。
鈴木こうじ