癌宣告から1週間後に手術。2日後、点滴スタンドを引きずりながら廊下を歩いていると、「福井さん(私の仮の名)、身体傾いてるぞ!」と、冗談を飛ばす入院仲間。
「アメリカンクラッカーはできないけどね」と、私もキリ返す。
この人は舌ガンの手術を受けたのだ。「や~、おしゃべりの俺も、しゃべられなくなるのかと思って、落ち込んだけどよ。手術したら舌が短くなったせいか、前より舌が回るのよ~、ははは!」
私は、再発防止のための放射線治療が必要とのことで、転院した。「こうがん癌 使う薬は こうがん剤」かと思ったら、違った。
癌病棟は、ある意味悲惨である。中学生の女の子が毛髪を失ってキャップをしている・・・赤ちゃんを連れた旦那が見舞いに来て、若い奥さんだと知った。
「死神」とあだ名される肝臓癌の患者が、談話室で首うなだれている。「福井さん、知ってるかい。○○号室のSさんが死んだよ」この類のニュースの時だけ、少し元気になり薄笑いを浮かべる。
食事の時、ご飯の臭いにやられて嘔吐する抗ガン剤治療の患者。私も、放射線治療を重ねるうちに、激しい倦怠感、体重減少に見舞われたが、何とか乗り切った。
と言うより不思議な安逸感で満たされていた。つまり、私の命は私のものではなく、与えられたものであり、お任せなのである。任せてしまえば、これほど楽なものはない。
こんな感覚を持ったのは、後にも先にもこの時だけで、不思議な、言い換えれば人生観が変わったような気がした。職場の医師によると、死を間近に控えた人の人生観は、もう一度変わるそうだ。![]()
心臓で入院してから転院を経て、2ヶ月で退院した。お世話になった看護婦さん達の似顔絵を描いた感謝状を渡すと、驚きながらも喜んでくれた。
画像をクリックすると大きくなります![]()
