「マリアは忽然と現れた天使ガブリエルから、やがて神の子を生むことになると告げられ、処女のまま懐胎した。そして旅先のベツレヘムで臨月を迎え、馬小屋で男の子を生んだ」。――これはよく知られている、救世主イエス・キリストの降誕伝説です。


イエスの降誕伝説は、厩(うまや)=馬小屋の戸のあたりで生まれたという聖徳太子の誕生譚となんとなく似ているので、両者には何か関係があるのではないか?


平安時代成立の太子伝『聖徳太子伝暦(しょうとくたいしでんりゃく)』では、ある日、穴穂部間人皇女(あなほべのはしひとのみこ)の夢に金色に輝く僧侶――じつは救世観音(くせかんのん)の化身――が現れて、「お腹をお借りしたい」といって彼女の口の中に入り、これによって皇女は太子を身ごもる、という話になっています。これも天使ガブリエルの受胎告知となんとなく似ている話です。

今回はこの謎の解き明かしに挑戦します。