天皇陛下御即位記念十万円プルーフ金貨

・年銘:平成2年

・ <表>鳳凰と瑞雲

・ <裏>菊花紋章と桐と唐草

(平山郁夫 東京芸術大学学長(当時)のデザイン)



・品位:純金

・直径:33.0mm

・厚さ:2.4mm

・量目:30.0g

・製造期間平成2年10月〜平成3年3月

・当時の発売価格:113,300円

・引換開始日:1991年(平成3年)4月10日

(4月10日は天皇、皇后両陛下の御結婚記念日に当たる)

・発行数:10万枚



・鳳凰(ほうおう)

聖人が天子の位に就く時に現れると伝えられる瑞鳥(ずいちょう)。

・瑞雲(ずいうん)

めでたいことの前兆として現れる雲。



鳳凰(ほうおう)

雄が鳳、雌が凰

大正11年から昭和13年まで発行された鳳凰50銭銀貨は2羽が向かい合った番(つがい)のデザインだった。



記念金貨の発行は、昭和61年(1986年)11月に発行された天皇陛下御在位六十年記念十万円金貨(昭和7(1932)年の20円金貨以来54年ぶりの金貨発行)以来2度目。




天皇陛下御在位六十年記念十万円金貨使用している純金地金の市場価格と金貨の額面価格の差(約六万円)が大きい事が偽造事件の原因となったことを重視、金の量を50%増やして30gとし、直径も前回の30mmよりひと回り大きい33mmに、厚さも2mmから2.4mmになった。こうして使用している純金地金の市場価格と金貨の額面価格の差(約三〜四万円)が縮まった。




天皇陛下御在位六十年記念十万円金貨大量偽造事件

平成2年(1990年)1月下旬、都内のコイン商Cから富士銀行日本橋支店に持ち込まれた天皇陛下御在位六十年記念十万円記念金貨 1,000枚(1億円相当)が偽造であることが判明。英国人コイン商から仕入れたものであったが、後に別ルートでも海外から大量に流入していることが分かり、その数は最終的に約10万8千枚(正規発行数一千百万枚の約1%)、額にして108億円に達した




偽造天皇陛下御在位六十年記念十万円金貨の特徴

・昭和六一年の「六十一」の刻印部に肉眼でも識別可能な盛り上がった極細の線状のキズが存在する。

・金貨の表面の色調が薄い。

・全体の彫りが浅い。

・表裏面模様の形状が粗い。

・ブリスターパックの色調がやや紫色を帯びている。

・ブリスターパックのエンボス模様の形状が異なりへこみも深い。




警視庁の捜査で判明した偽造金貨は10万7千枚、日銀に還流する前にコイン業者や金融機関から押収した約2万2千枚を除く約8万5千枚が偽物と気づかれないまま日銀に還流し、日銀本店の金庫から約85億円分の紙幣が市中に支払われたことになる。




日銀に還流した偽造金貨も材質は本物と同じ純金だが、金地金(20g)としての価値は当時の相場で1枚3万5千円程度なので回収できる資金は時価換算で約30億円前後。日銀から支払われてしまった約85億円との差額の50億円以上が損失として残る計算となるが、そんな前代未聞の大失態を自分が日銀総裁やってる時に確定したがるバカは居ない訳で、この問題の結論は先送りされた。




平成2(1990)年に発覚した天皇陛下御在位六十年記念十万円金貨大量偽造事件に絡んで、日本銀行が平成13(2001)年3月期決算68億円の特別損失を計上して損失処理した。犯人が捕まれば賠償請求が可能なため、これまで損失を確定させなかったが通貨偽造罪の時効である10年が経過したため鋳潰して金の延べ板に成型し資産として保有していた偽造金貨を3月末の市場相場の1グラム=約千円で資産価値を算出し、“原価”の1枚十万円との差額を算出して損失額計約68億円を確定させた(両替で偽造金貨8万6千枚が日銀に還流していた)。先送りされたババを引かされた気の毒な日銀総裁(第28代)→ 速水優えーん




天皇陛下御在位六十年記念十万円金貨のあゆみ


昭和61(1986)年4月

天皇陛下御在位六十年記念のための十万円及び一万円の臨時補助貨幣の発行に関する法律

公布年月日:昭和61年4月28日


天皇陛下御在位六十年記念のための十万円及び一万円の臨時補助貨幣の品位及び形式に関する政令

公布年月日:昭和61年4月28日


昭和61年5月

金地金の調達

大阪国際空港から造幣局まで、厳重な響備のもと大量の金地金の搬入が始まった。


昭和61年7月10日

製造開始

本局において大蔵大臣を迎え打初め式を行った。昭和61年9月には日本銀行への引渡しを完了した。


昭和61年10月16日

10万円金貨幣と1万円銀貨幣の引換えに先立ち、全国の金融機関、郵便局の窓口で抽選券が配布された。


昭和61年10月30日

当選番号の抽選


昭和61年 11月10日から金、銀貨幣の引換えが行われた。(発行された六十一年銘 の1千万枚の金貨のうち約100万枚が売れ残った)。


昭和62 (1987)年 5月

刻印の年次を「六十二年」に変えて、追加発行100万枚のうち70万枚を通常版金貨として発行。


昭和62年9月1日から天皇在位六十年記念貨幣セット4種類を予約通信販売開始


①六十二年銘 十万円プルーフ金貨

(¥126,500円)

②六十二年銘 十万円金貨

(¥117,300円)

③六十一・六十二年銘 十万円金貨

(¥233,500円)

の三種類、計30万セット

④六十一年銘 金、銀、白銅貨

(¥130,000円)5万セット

結果:15万セットしか売れなかった。


昭和63(1988)年 1月

天皇陛下御在位六十年記念十万円プルーフ金貨が、予約申し込みをした人の約半数しか代金を払い込まず、13万2千枚しか発行されないことが明らかになった(プルーフ金貨は受注生産)。


昭和63年5月

天皇陛下御在位六十年記念十万円プルーフ金貨などをセット販売した大蔵省造幣局は17日までに、コインセットにかかる物品税約25億円を大阪国税局に納めた。国税庁が「貨幣」でなく、「収集品」と判断、宝石や貴金属と同じ15%の物品税をかけた為、天皇御在位六十年記念十万円プルーフ金貨の頷布価格126,500円のうち、16,500円が税金ということになった。なお、平成元(1989)年4月の消費税の導入(当時の税率は3%)に伴い、貴金属製品に対する物品税は廃止されることになる。


平成6(1994)年度中に大蔵省が、日本銀行に還流した天皇陛下御在位六十年記念十万円金貨、約4百万枚(発行枚数の3分の1)を金塊約90トンにして売却。売却益は約1,200億円に上るものの、金相場の下落で約600億円「売却損」が出る計算。


この時代の日本人は「黄金の日々」を生きていたんだね〜爆笑 おしまい