耳の話 その25 国立時代(11) | 小迫良成の【歌ブログ】

小迫良成の【歌ブログ】

「唱歌是生活的乐趣(歌は人生の喜び)」
「有歌声的生活(歌と共に歩む人生)」
 この言葉を心の銘と刻み込み
 歌の世界に生きてきた
 或る音楽家の心の記憶

82年、国立音大2年次。

 

再度の藝大受験を決めた私は

まず、そちらに専念するための

環境作りから手をつけた。

 

ひとつは

これまで住んでいた単身赴任者用の

「間取りは広いが音出し不可物件」から

声出しのできるアパートに引っ越すこと。

 

81年当時の国音の

鶏小屋のような練習棟だけでは

さすがに十分な練習時間を

確保することができないので、

得心できるまで練習できる

音大生専用のアパートを探した。

 

見つけたのは

五日市街道沿いの「いなげや」から

すこし南下したところにある

「フラット栄」というアパート。

 

元は自動車会社の社員寮だったところを

そのまま賃貸アパートにした物件で、

割と広い敷地内に

木造二階建てのアパートが2棟並び、

合計20部屋はあったと思う。

 

すぐ隣はコインランドリー併設の銭湯、

裏手は田んぼだったか畑だったかで

一般住宅からも離れていたので、

夜遅くまで音を出しても大丈夫という

なかなかの理想の物件だった。

 

…その分、

部屋の間取りは以前より狭くなり

逆に家賃は1.5倍になってしまったが…

 

更に立川駅前のダイエーが

ちょうど新入生歓迎フェアをやってたので

一番安い中古のアップライトピアノを購入し

下宿で練習できる体制を整えた。

 

また、これまでは

菅原君から貰ったレコードプレーヤを

ラジカセ経由で聴くだけだったが、

秋葉原のオーディオショップで

ちょうどカラーボックスの1枠に

すっぽり収まる大きさのスピーカーが

組み立てセットで安く売られているのを知り、

こちらも秋葉まで出向いて入手。

 

最初の頃こそカラーボックスを横に置き

その中にスピーカーを仕込んで聴いていたが、

この大きさのスピーカーなら

押入れの天袋にも仕込めることに気がついて

そのアイデアを即実行に移す。

 

…結果、

音大生ばかりが集まる

賑やかな「フラット栄」の中でも、

 

「ピアノを弾いているか、

 歌を歌っているか、

 レコードを大音量でかけてるか、

 とにかく、やたらと騒がしい部屋」

 

…と、

私の部屋はいつの間にか

上の階の住人達から

烙印を押されるようになっていた。(アハハ)