小迫良成の【食ブログ】

小迫良成の【食ブログ】

「民以食以天(民は食を以て天と為す)」
「吃是一在世(食べることは生きること)」
 この言葉を心の銘と刻み込み
 食の世界を回遊・遍歴する
 或る音楽家の魂の記録

「味醂」というのは

どのような調味料なのか、

子供の頃は全然わからなかった。

 

「みりん」とラベルに書かれた

ちょっと太めの瓶にはいったものは

割と頻繁に目にしてはいたのだが、

用途がいまひとつ、ピンとこなかったのだ。

 

「さて、これは一体何なのだろうか?」

 

これは酒ではない。

 

いや、厳密には酒類に分類されるもので

その意味では「酒」と呼ぶべきなのだろうが、

いわゆる「日本酒」「清酒」とは全く異なる。

 

むしろ

「酒じゃないもの」

という印象の方が強かったりする。

 

それでは、

酒を化学変化させたものか?

 

いや、酒をそのまま放っておくと

「味醂」ではなく「酢」になってしまう。

 

味醂に「甘さ」はあっても

「酸っぱさ」はないんだよなあ…

 

単純に

酒に砂糖でも混ぜ合わせたもの?

 

確かに甘さはあるが、

砂糖の甘さとは違う気がする。

 

まあ、味醂も放っておくと

蜂蜜みたいに結晶化したりするけどね…

 

Wikiで調べてみても

今一つ「これ!」という答えが返ってこない。

 

…あえて例えるなら

和製リキュールのようなものか…

 

そんな、今一つ

輪郭がはっきりしない「味醂」だが、

これがあるのとないのとでは

和食の味が違ってくるのだから不思議である。

 

 

独り暮らしをしていた頃は

「味醂」を使ってはいなかったな。

 

いや、何度か買ってはみたのだが、

安い「みりん風味」の物だったせいか

あまり良い印象がなかった。

 

・・・というより、

はっきり言って不味かったし、

なにか胸焼けのするような味が

好きにはなれなかった。

 

だから、料理に使うことはなかったし

そもそも「和食」をほとんど作らない以上

味醂の出番そのものがなかったと言っていい。

 

味醂の味に目覚めたのは

割と最近のこと。

 

近所のスーパーで

三河の本味醂を見つけ、

ものは試しと一本買って

味噌汁に使ってみたところ

良い塩梅の味に仕上がったのだ。

 

出汁と酒と醤油だけだと

どうしても味が尖がってしまうのだが、

味醂を少し入れることで

この尖った味が丸くなってくる。

 

それまでは砂糖や蜂蜜を

入れたりしていたのだが、

砂糖も蜂蜜も、どちらかというと

丸い(まろい)ではなく

尖った甘さなんだよね。

 

だから味醂の欠けた味噌汁だと

どうしても尖った味同士がぶつかって

優しい丸い味にはならなかったのだ。

 

今までの「みりん風調味料」で

この味が出せなかったのは、

味醂特有の丸みが

欠けていたからなんだな。

 

そこに気がついてからは

和食の味付けの必須として

味醂も台所の常備品となった。

 

かつおや昆布の出汁をベースに

味醂と酒で加減を決めて

醤油は気持ち分だけいれると

良い具合のすまし汁になる。

 

味噌を入れて味噌汁にするも良し、

そのまま具材を少々入れて

お吸い物にするも良し…

 

味醂を上手く活用すると

毎日の食卓での汁物が楽しくなってくる。

 

※写真は味醂のイメージ(写真ACより)