最近はBS松竹東急でやる古いドラマのことばかり書いてて、スカパー!でやる古いドラマのことは、これといったネタがないばかりに御無沙汰していたのだけど、各チャンネル7月のラインナップが発表されたからようやく書ける。

 

トピックは、何と言っても今回のタイトルに掲げた堀ちえみ主演ドラマ『メチャン子・ミッキー』がホームドラマチャンネルで放送されること。1982年4月から9月にかけてTBSで放送された30分枠の連続ドラマで、関東では翌1983年の6月から7月にかけて同局の早朝時間帯で再放送をしたっきりの、まさにこれぞ蔵出し(未ソフト化かつBS・CSでもやったことがないもの)作品なのである。

 

メチャン子・ミッキー|ホームドラマチャンネル (homedrama-ch.com)

 

制作プロは、東宝テレビ部。スカパー!昔のドラマ・ウォッチャーならご存じのことだが、以前は山ほどあった東宝テレビ部制作の放送作品が近年は少ない。さらにめぼしいものともなると、三年ほど前にAXNミステリーで「火曜日の女」シリーズの東宝テレビ制作分のいくつかを久方ぶりにやったり、チャンネル銀河で単発ドラマの『西村京太郎サスペンス 寝台特急「ゆうづる」の女』(フジテレビ、1989年4月7日放送)を蔵出しでやったぐらいに留まり、フィルム撮影で両方の要素、連続ドラマで蔵出しなのは全然なかった。

 

火曜日の女シリーズ 蒼いけものたち|AXNミステリー ~日本唯一のミステリー専門チャンネル~ (mystery.co.jp)

 

西村京太郎サスペンス 寝台特急「ゆうづる」の女 │ チャンネル銀河 (ch-ginga.jp)

 

現代劇のそれだとファミリー劇場が昔のドラマ路線を店じまいしようとしていた2011年にやった『気になる天使たち』(フジテレビ、1981年4月~7月放送)以来なんじゃないかと思う。時代劇のほうはちょっと疎いんでわからないが、やはり同時期の時代劇専門チャンネルでやった『暴れ九庵』(関西テレビ、1984年10月~1985年3月放送)あたりかと振り返る。いずれも十年以上前のことになってしまっている。

 

「気になる天使たち」、フジテレビの夜明け前 | 茶屋町吾郎の趣味シュミtapestry (ameblo.jp)

 

「暴れ九庵」で風間杜夫と堀ちえみが再会 | 茶屋町吾郎の趣味シュミtapestry (ameblo.jp)

 

だから、もう驚きなのである。いまの時代、蔵出し作品を出すには、映像の状態をHD化などして放送に耐えうる画質までコストをかけて手直ししなければならないし、出演者への許諾も昔と違って必要となることからこれもまた七面倒くさい作業で、ソフト化前提とか近年は配信のラインナップに載せるなどしないと割に合わない。東映の古い連続ドラマはそういうのがあるから続々と出ているのだけど、対照的に東宝テレビ部のそれはソフト化も配信も積極的とは言えないから、ホームドラマチャンネルが今年の春先に【連続企画】「堀ちえみデビュー40周年プラス1」特集をやっていくと発表した際、記念すべきデビュー作品であり、初主演作品でもある『メチャン子・ミッキー』はスカパー!昔のドラマ・ウォッチャー界隈では難しいと思われていた。だから、もう驚きなのである、と二回も書いてしまう。

 

ゴジラ&東宝特撮 OFFICIAL MOOK vol.04 愛の戦士 レインボーマン (講談社シリーズMOOK)

こちらも東宝テレビ部の制作作品

東宝が独自のテレビ局を立ち上げようとしてそこから転じた東宝テレビ部設立から

1972年放送開始のこの『愛の戦士 レインボーマン』に至るまでの歴史も綴られている

 

さて、これからは『メチャン子・ミッキー』の作品自体を紹介していこう。1982年4月から9月までTBS水曜夜7時半に放送されていた30分枠の若者向けドラマで、主演は大手芸能プロダクションのホリプロが全国各地に有望な新人タレントを求めて毎年開催していたホリプロタレントスカウトキャラバンで前年に優勝した新人アイドルの堀ちえみ。もともとこの枠では同じ東宝テレビ部の制作&ホリプロの先輩であり、初代ホリプロタレントスカウトキャラバン優勝者の榊原郁恵による主演ドラマ『ナッキーはつむじ風』(1978年10月~1980年3月放送)&続編の『愛LOVEナッキー』(1980年3月~10月放送)をやっていたことがあり、その流れから来る新人抜擢だったのである。なお、榊原郁恵は本作の第11話「帰ってきたつむじ風!!」(1982年7月14日放送)にナッキー役で応援ゲスト出演している。

 

主題歌「メルシ・ボク」も担当

前月1982年3月発売のデビュー曲「潮風の少女」と両A面扱いだが

歌謡番組などでは「潮風の少女」のほうを歌っていた

 

物語の設定を簡単に示すと、東八郎ふんするウルトラ婆さんの孫娘、堀ちえみふんするミッキーが幼少期に過ごして以来13年ぶりにアメリカから日本に帰国し、転校した高校でその血筋に加えてアメリカ仕込みのバイタリティあふれる行動で騒動を巻き起こすという青春コメディ。帰国子女の役なんだけど、英語はまったく喋れないという“ぬるい”設定なのは御愛嬌(笑)。タイトルに掲げられた“メチャン子”という日本人離れした感覚の持ち主を表現したかったのかな。

 

“メチャン子”な彼女に振り回される同年代の男子生徒役には、堀ちえみがアイドル活動末期の1986年に大映テレビ制作の『花嫁衣裳は誰が着る』(フジテレビ、1986年4月~10月放送)で主演と相手役として再び共演する松村雄基、初代「あばれはっちゃく」役の吉田友紀、『3年B組 金八先生』第2シリーズ(TBS、1980年10月~1981年3月放送)で強烈な印象を放った“腐ったミカン”こと加藤優役の直江喜一、当時幾つもの学園ドラマに出ていた川原田新一など見覚えのある面々がいっぱい出ている。また、東宝テレビ部の学園ドラマにはおなじみのバイプレーヤー、穂積隆信が隣家の住人役で出ている。この年、穂積は自著『積木くずし』を出して早速話題となっていく。話題の本ともなればドラマ化の申し入れが引く手数多だっただろうが、昔から付き合いがある東宝テレビ部のプロデューサーで本作も務めている黒田正司に託して、翌年のTBSで連続ドラマ化されて社会現象となるほど大ヒットした。

 

撮影スタジオは東宝ビルトを使っていて、そこでは同時期に日本テレビで放送されていた、本作と同じく若者向けの連続ドラマ『陽あたり良好!』(1982年3月~9月放送)も撮られていた。固定セットの共有とか見付けられないものかと、いまから楽しみ。

 

「陽あたり良好!」で80'sを振り返る | 茶屋町吾郎の趣味シュミtapestry (ameblo.jp)

 

あだち充原作の人気ドラマ『陽あたり良好!』が日テレプラスでリピート放送。4/7(水) 朝4時から第1話開始 !! 竹本孝之&伊藤さやか出演。 - S40ニュース! - 昭和40年男 (s40otoko.com)

 

一方、同じ東宝テレビ部の制作である『太陽にほえろ』(1972年7月~1986年11月放送)を撮っていたのは国際放映スタジオだったし、制作局も違えば、東宝テレビ部側プロデューサーをはじめ、出演者や脚本家も被っていないのだが、メイン監督だった竹林進が参加しているのが『太陽にほえろ!』ファンにはポイントとなるだろう。竹林監督は翌1983年に病気で倒れてそのまま監督業を引退していったからキャリア晩期の『太陽にほえろ!』以外で触れられるまさしく珍品となる。

 

堀ちえみは本作終了後の1982年秋改編期からは同じくTBSで放送の、今度はVTR収録ドラマ『パリンコ学園No.1』に同じ花の82年組の松本伊代、小泉今日子らとの共演で出る。コント仕立てのナンセンスコメディドラマで、歌のコーナーも挟まれていたりとバラエティ番組の面が強いから純粋なドラマ番組ではないものの、演技に関しては引き続いてキャリアを積んでいった…はずだった。そして、デビュー二年目の1983年秋改編期からはかの大映テレビ制作での連続主演ドラマ『スチュワーデス物語』が放送開始される。あのたどたどしい台詞回しのクサい演技が=堀ちえみの真骨頂となってしまうのだけれども、御本人の弁によれば、監督からは「新人のようにもっと初々しくやれ!」とドヤされていたとのことである。

 

スチュワーデス物語(堀ちえみ出演)|ドラマ・時代劇|TBSチャンネル - TBS

 

7月にはこのほかにも、榊原郁恵が前述した『ナッキーはつむじ風』→『愛LOVEナッキー』終わりで出た、1980年11月から放送開始された大映テレビ制作のもので、柴田恭兵とのW主演『青い絶唱』がTBSチャンネルで放送開始。

 

青い絶唱|ドラマ・時代劇|TBSチャンネル - TBS

 

「赤いシリーズ」と同じく、幾つもの伏線が貼られたミステリー&サスペンスドラマながら山口百恵も宇津井健も出ないことから「赤いシリーズ」がジリ貧となり、その仕切り直しで今度は「青いシリーズ」へと衣替えしたが、結局はこの一作で終わっていった。本放送時同様に近年もその扱いが不遇で、TBS‐大映テレビ制作のものを独占的にやるTBSチャンネルにおいて「赤いシリーズ」は回転寿司状態となって年がら年中、まあ半年から一年のサイクルで頻繁にリピート放送しているのに対して、『青い絶唱』なんてここ十年の間はTBSチャンネルがAKBのそれを真似て「大映ドラマ総選挙」と銘打った特集において他の作品と一緒くたに第1話だけとか最終回だけを放送したものの、フルで全話放送するのはいつ以来のことか。開局期にやっていたこのような作品をもっともっと再放送してほしいところ。