俳優・渡辺徹が亡くなった。あまりに突然であったが、その後半生は、一日七食という暴飲暴食による過度な肥満→糖尿病に始まった様々な持病との付き合いであったことから危惧されたものでもあって…。しかし、まさかこんなに早くお別れが来るなんて思いも寄らなかった。
物心付いた時からの『太陽にほえろ!』ファンであった自分、1981年に渡辺徹が新人刑事として番組に加入した前後の、神田正輝、三田村邦彦とのミワカントリオ、そして世良公則が加入してのカワセミ・カルテットあたりが一番熱中して観ていた。なかでも、渡辺徹演じるラガー刑事が一番好きであった。最年少者でまだ二十歳そこそこの青二才キャラではあったけれど、当時小学校低学年だった自分から見れば、そのほとばしる情熱が憧れのお兄ちゃんそのものであった。遠い日の思い出が蘇る。訃報を知ったときからいまも喪失感でいっぱいだ。いまさらながらに思う、1987年に裕次郎逝去の報を受けた日活アクション映画全盛期世代もこんな感じだったのかな、って。
徒然なるままに、クルマを中心に「太陽にほえろ!」 in 1981 | 茶屋町吾郎の趣味シュミtapestry (ameblo.jp)
ラガー刑事が登場した時期で思い出深いのは、その登場回の次回より番組に投入されたセリカXX
ゆえにラガー刑事が一番ハンドルを握っていたかと振り返る
『太陽にほえろ!』時代のキャリアについては、自分よりも遥かに詳しい北の山村警部補こと通称・けぶさんがご自身のブログにて綴っておられるので、そちらを参照してもらいたい。
渡辺徹さん、おつかれさまでした・・・・・・ - 「太陽にほえろ!」当直室 仮設日誌 PART2 (goo.ne.jp)
自分は同時期のことで、追悼したい。
『太陽にほえろ!』出演中の活動として忘れてならないのが歌手活動である。大ヒット曲「約束」で幾つものの歌番組に出演し、そのなかでも『太陽にほえろ!』と並ぶ国民的番組のTBS『ザ・ベストテン』への長期間に渡る毎週の出演は絶大なものであった。これを機に渡辺徹は、人気刑事ドラマのひとつに出ている若手俳優から、誰もが知る存在へとステップアップしていく。
1982年8月25日に発売された二枚目のシングル「約束」は、10月21日に第8位で初ランキング。その出演は『ザ・ベストテン』が放送されている港区赤坂のTBS局舎内Gスタジオからではなく、なんと『太陽にほえろ!』が撮影されている世田谷区・砧の国際放映からで、ファンにはご存じ7番ステージに組まれた捜査一係・刑事部屋セット前からの中継と相成った。
他のレギュラー刑事たちの出演はなかったのだけど、大勢の撮影スタッフ、それから出待ちしているファン(全員十代であろう女の子!)らを招き入れての応援もあって賑やかなものとなり、オマケに第10位で一足早くランキングされて出演していた、「約束」が使われているグリコアーモンドチョコレートのCFで共演の小泉今日子とイチャイチャした掛け合いを見せるなど、まさにラガー刑事=渡辺徹=80年代の青春キャラという図式を大いにアピールしたのであった。
翌日金曜の『太陽にほえろ!』は、タイミング良くラガー刑事主演エピソードの第528話「真夜中のラガー」。視聴率的なことを持ち出すと、10月21日の『ザ・ベストテン』は24.9%、翌22日の『太陽にほえろ!』は25.8%(どちらも関東地域・ビデオリサーチ調べ)と、ラガー刑事=渡辺徹出演の相乗効果に加えて、レギュラー番組が霞む秋改編期の特番ラッシュが過ぎ去った後ともあってか、ともに前週分より5%以上も伸ばしていて、ともに10月の最高視聴率を獲得している。
「約束」はそれ以降も第6位、第4位、第3位と調子よく順位を伸ばして、初登場から4週後の11月18日にはとうとう第1位を獲得。12月9日まで4週に渡って第1位に君臨し続ける。当時、男性アイドルのトップと云えば、ジャニーズ事務所所属の田原俊彦と近藤真彦。『ザ・ベストテン』常連でもある彼らを抑えて、この期間限定ながら名実ともにトップへと立ったのだった。その間、歌唱前にあるトークコーナーでの底抜けに明るいキャラクターがウケていて、12月2日には「迷場面集」で度々出てくる一瞬芸の“想像妊娠”を披露したりした。12月16日、中森明菜の大ヒット曲「セカンド・ラブ」に第1位を明け渡したものの、「約束」は翌年1月20日まで三か月にも渡ってランキングし続けていく。
「約束」、「愛の中へ」が連続ヒットし、アイドル街道を突っ走っていた
1983年1月24日に発売したアイドル雑誌では堂々の表紙を飾る
また、「約束」がヒットする中で12月10日に発売された三枚目のシングル「愛の中へ」もその余勢をかって1983年最初の放送である1月6日に第10位でランキングされ、この日から「約束」とともに二曲歌唱した。なお、「愛の中へ」でのランキング時における出演は、スカパー!のTBSチャンネルで放送している1月27日放送分のものが時折リピートされているので視聴環境がある方は是非ともチェックされたし。「愛の中へ」は残念ながら「約束」以上のヒットは適わなかったが、2月10日まで6週に渡ってランキングし続けた。
ザ・ベストテン(1983年1月27日放送)|音楽|TBSチャンネル - TBS
所属していた文学座の先輩・中村雅俊も大ヒット曲「恋人も濡れる街角」で出演
その関係から、「約束」、「愛の中へ」は中村が持っていたバックバンドでの歌唱
そして、渡辺よりも多忙な中村に代わってリハーサルでの歌唱も請け負っていたとか
偶然の一致 | 茶屋町吾郎の趣味シュミtapestry (ameblo.jp)
1983年1月、テレビ大好きっ子は毎日どんな番組を観ていたのか
さて、「約束」とともに代表曲として並べられている、1983年9月21日に発売された5枚目のシングル「AGAIN」は、主演映画『夜明けのランナー』の主題歌であるととともに、「約束」、「愛の中へ」同様に『太陽にほえろ!』のなかでも掛かっていたグリコアーモンドチョコレートのCF曲だったからファンにはおなじみではあったはずなんだけど…、『ザ・ベストテン』では20位圏内にもランキングされることはなく、NHK初出演となった『レッツゴーヤング』やフジテレビ『夜のヒットスタジオ』のほうには出演を果たした一方で、ランキング番組とは無縁のものとなった。
それ以降は『ザ・ベストテン』とは縁が切れたかと思いきや、1985年4月の男性司会者・久米宏の降板後に10月の二代目男性司会者・小西博之登場まで、番組は黒柳徹子との代理パートナーとして週替わりでゲスト司会者制度を設けていて、渡辺徹は5月30日に出演している。