前回の長々とした記事は、自分の『太陽にほえろ!』愛とトヨタ・ソアラ愛を思いっきりぶつけたつもりなのだが、それでも書き足りなかった(笑)。今回はその補完版として、クルマネタを中心に、ソアラとその"姉妹車"が初登場した『太陽にほえろ!』の1981年を振り返っていきたいと思う。それでは、どうぞお付き合いのほどを。

 

 

 

1981年登場のソアラはまったくの新モデルとして登場したのだが、前身となったものがある。それは1978年に登場した初代セリカXX。4気筒エンジン搭載車だったセリカのノーズを伸ばして6気筒エンジンを積み込み、加えて豪華装備も施された上位モデル。もともとセリカは北米市場がメインとなっていたのもあって、セリカXXの現地名:スープラは、現地で人気を誇った日産の280Z(日本名:フェアレディZ)への対抗車種で世に出てきたのだ。そういった性格からか、4気筒のセリカがDOHCエンジンでスポーツ性を謳っていたのに対して、こちらは6気筒2600㏄といった大排気量エンジンもOHCのままで、ハイウェイ・クルーザーといった位置づけであった。なお、トヨタはDOHCエンジン搭載車ではないものに"GT"のネーミングは使わせない主義で、=グランツーリスモと宣伝出来なかったのが歯痒かったかと想像する。それだけに、後継であるソアラが登場した際には反動で大々的に"GT"であることを喧伝した。

 

ソアラのカタログには、こう書かれてある。


 このクルマは
 こころからGTを愛し
 人生のロマンをクルマとともに語ることのできる
 すべての人々に捧げる。

 

発売時から絶好調だったソアラは、数年前からの排ガス規制で欲しくても欲しいと思えるクルマがなかった時を忸怩たる思いで過ごした世代、さらにその前のトヨタ2000GTに「いつかは俺も…」と憧れた世代、そういった経験をしてきた大人たちがまず飛び付いた。人生経験なんてほとんどない当時7歳の自分は、ソアラが世に出てきたバックボーンなんて理解出来るわけはなく、たんに地味なカタチをした2ドアクーペ、もっと悪い言葉で示せばカリーナに毛が生えたものにしか見えなかった。だから、正直云って、当時はソアラよりも四か月遅れで登場してきた二代目セリカXX派だったのだ。この気持ち、自分と同じ世代なら判ってもらえるかと思う。

 

子供たちにとって、『太陽にほえろ!』以上にセリカXXが人気をなしたのは、やはり『よろしくメカドック』であろう

 

 

それで『太陽にほえろ!』に出てきた二代目セリカXXのハナシをしていきたいのだが、その前に初代のほうも二回ほど登場していたことを触れておきたい。撮影時期はモデル最末期、放送時期はすでにモデルチェンジされてしまった後である1981年7月24日放送の第467話「スコッチ非情」とその次回の第468話「殴られたスニーカー」の二本撮り分に、3ナンバーで、内装が革シートの仕様、イメージカラーであったピュアーホワイトのボディ色だったものが出ている。番組には当時もうすでにソアラが投入されていたのに、この二回分には登場しなかったことから、おそらくなんらかの理由でソアラが使えなくなり、ソアラ相当の代車としてトヨタから提供されたものと考えられる。故障とかでの番組側の都合ならば、番組で使っている他の車両で賄えば済むことなので、トヨタ側の都合で、例えば広報車両としてソアラが必要となったことへの一時的な代替ではないかと。ごくごく短期間の使用ながらも、昼間の撮影でバッチリと映っている「スコッチ非情」は本放送時から妙に印象に残る回だったことから、大人になって『太陽にほえろ!』を振り返るようになるまで、初代セリカXXも捜査車両としてレギュラーで使われていたものと勘違いしていた。ハハハっ…。

 

お待たせ。ここからようやく二代目セリカXXのハナシに。1981年7月2日に4気筒のセリカとともにフルモデルチェンジが発表され、『太陽にほえろ!』への投入は1981年10月2日放送の第477話「俺は誘拐犯だ!」から。ソアラと同様に発表後わずか三か月でのじつに早いタイミングでの登場。また、渡辺徹演じるラガー刑事登場の次回からでもあり、よくステアリングを握っていたことで、"細いころ"のラガーが運転するクルマとして印象深いものがある。

 

ソアラのDOHCエンジンを流用したことから、その性能は折り紙付き。さらにソアラの保守的なエクステリア・デザインやGT色が強くてスポーツカー色が薄かったことを敬遠していた"感覚で選ぶ"層にも支持されていく。前述のとおり、自分もその一人。こんなに格好良いクルマはないと思ったものだ。ゆえに、ラガー=セリカXXに憧れたものではあったが、演じる渡辺徹ご本人が当時プライベートで購入したという愛車は彼が子供のころから憧れていたフェアレディZだったとか…。

 

『太陽にほえろ!』に提供されたセリカXXは、6気筒DOHCエンジンを積んだ最高グレードの2800GT。AT仕様でその価格は241万円。一見すると同グレードのソアラ(豪華装備仕様の2800GT EXTRAではない、"ただ"の2800GTのAT仕様で280万円)よりも割安ではあったが、ソアラの2800GTがオートエアコンとコンポステレオを標準装備だったのに対して、なんとセリカXXではこの時代になってもオプション扱いで、それらを付けると269万円と跳ね上がって、大差ない価格となってしまうのであった。さらに、ツートンカラーのボディ色、ナビコン(カーナビの始祖)、革シート仕様などオプションてんこ盛りであったことから、番組に先行して投入されていたソアラ2800GT EXTRA(291万円)を超える高額車両だったのは間違いない。それまで『太陽にほえろ!』にトヨタが提供してきた2ドア車両は、セリカやスプリンターといった中堅どころの、またそのグレードもだいたいが中堅どころといった、100万円台前半そこそこの文字通りシブいものばかりだっただけに、ソアラと二台立て続けにドドーン!と最高級車で豪華絢爛、七曲署捜査一係は宝くじにでも当たったんじゃないかという様相であった。

 

1982年2月6日から一年間放送した戦隊シリーズ

この手の番組には珍しくトヨタが車両協力をしており、変身前のヒーローたちが乗るクルマとして

ツートンカラーではない真っ白(名称はシティホワイト)のセリカXX 2800GTが登場

『太陽にほえろ!』に提供されたものとはナンバーが一番違いの「品川33 な 34‐75」であった

 

 

1981年当時の『太陽にほえろ!』、3月までは裏番組であったTBS『3年B組 金八先生』の第2シリーズ(通称・腐ったミカン)にまたしてもコテンパンにやられていた。しかし、裏番組だった桜中学シリーズは"金八先生"以外は意外と奮わず、4月から始まった後番組『2年B組 仙八先生』との視聴率競争は終始リードを保ち、20%台を毎回確保。翌年の『3年B組 貫八先生』になると圧倒的な差を付け、あちらが10%前後を行き交うのを尻目に往時の30%台に迫る20%台後半となり、とうとう桜中学シリーズを終了へ追い込むまでになった。その人気復活の原動力となったのは、この1981年前後に新入り刑事として続々入ってきた、神田正輝、渡辺徹、三田村邦彦のミワカン・トリオ、そこに世良公則を加えたカワセミ・カルテットの"アイドル刑事路線"だったのは申すまでもないが、「西部警察」シリーズのスーパーマシンほどではないにしろ、注目度が高く、そして憧れるクルマであったソアラとセリカXXのコンビも寄与していたのではないかと思っている。

 

当ブログ記事 「3年B組 金八先生」vs「太陽にほえろ!」

https://ameblo.jp/goro-chayamachi/entry-11207862630.html

 

 

さて、姉妹車どうしであったこの二台、ソアラは国内専売車種となり、二代目セリカXXのほうはスープラとして引き続き輸出車種ともなる。1982年のカナダロケ、1984年のパリロケ、1985年のハワイロケなど『太陽にほえろ!』の海外ロケ編ではそのスープラが登場する。どれも4輪部分にオーバーフェンダーが着いたイカつい姿に驚くだろう。これは輸出仕様だけに施されたもので、国内仕様と同じボディサイズであるスタンダードの上位グレードとして、スポーツパッケージがあり、225/60HR14という極太タイヤをはかせるための処置である(国内仕様の2800GTは、195/70HR14というサイズ)。手持ちの資料によると、北米では14598ドルで売り出されたとされる。その当時1ドル=220円として、日本円換算でおよそ321万円。まさにプアマンズ・ポルシェであった対280Z用の価格付けだ。

 

ディスカバリー・チャンネルで放送されている『名車再生!クラシックカー・ディーラーズ』最新シーズンでは、そのトヨタ・スープラを題材に取り扱っている。まず、どんな番組かというのは、下記のブログに詳しく載っているのでそれを参照にしてもらいたい。

 

http://tequila-sunrise.net/名車再生%ef%bc%81クラシックカーディーラーズ-シーズ-2/

 

近隣では来月6月5日に放送される。観られる環境のある方はどうぞお楽しみに。

 

スカパー!公式 番組詳細 『名車再生!クラシックカー・ディーラーズ1982年式トヨタ・スープラ(二)』

https://bangumi.skyperfectv.co.jp/S/?uid=i13512906