最近、我々アラフィフ世代を悩ますのは、デアゴスティーニ・ジャパンやアシェット・コレクションといったところから書店売りの形態で、1970年代~80年代の子供の頃に慣れ親しんだテレビ番組のグッズが続々と売り出されていることだ。1コイン500円以下の激安な創刊号で釣っておいて、以降は2千円弱のものが週刊や隔週刊というペースで売られて100号を越える完結までの総額はどれも20万円を下らなくなるから危険極まりない。

 

自分は絶対ハマらないように注意していたんだけど、今年初めに往年の刑事ドラマ『Gメン'75』DVDコレクションが売り出されたことで、とうとう手を出してしまった。試験販売中で、まだまだ序盤も序盤だから完結までこの先遥かに長い。なので、同じ販売形態のものにまた手を付けるわけには…、と思っていたところ

 

 

デアゴスティーニ・ジャパンから6月創刊で『週刊 ナイトライダー』なるものが創刊されるとニュースが伝わってきた。1980年代に流行ったアメリカのアクションドラマ『ナイトライダー』に出てくるドリームカー、ナイト2000の精巧なディスプレイモデルを組み立てるもので、劇中で主役のマイケル・ナイトが操作して相棒のナイト2000=K.I.T.Tが反応するように数々のギミックも施されている、当時そういうのを夢見たアラフィフの心に刺さるものだ。

 

週刊 ナイトライダー | シリーズトップ (deagostini.jp)

 

付属の腕時計型端末で操作可能!世界が熱狂した『ナイトライダー』ナイト2000が史上初の1/8スケールギミックモデル化!週刊『ナイトライダー』創刊!! | 電撃ホビーウェブ (dengeki.com)

 

うーん、無茶苦茶欲しいよネ(笑)。

 

やっぱり、これも全110号という長大なもので、創刊号は490円(税込み)、以降は1890円(税込み)だから、計算してみると完成までの総額206,500円(税込み)也。おいそれと手を出せるものじゃない。

 

でも、無茶苦茶欲しいよネ(笑)。

 

とりあえず、6月の創刊までには二か月以上あるんで、よく考えてみるつもり。

 

さて、今回は『ナイトライダー』にちなんで、1980年代後半の国内におけるアクション・アメドラ全盛時代について語っていこう。

 

先月、二回にわたって同じ1980年代のアクション・アメドラ、『特攻野郎Aチーム』について語った際、「その1」のほうで“日本でも当時下火であったアメドラが再ブームとなっていく呼び水となる”と記した。まずはそこらへんの状況から。

 

特攻野郎Aチーム その1 | 茶屋町弥五郎の趣味シュミtapestry (ameblo.jp)

 

特攻野郎Aチーム その2 | 茶屋町弥五郎の趣味シュミtapestry (ameblo.jp)

 

1985年10月、テレビ朝日のローカル枠で『特攻野郎Aチーム』のレギュラー放送が始まったとき、国内におけるアメドラは人気薄であった。民放のゴールデンタイムには一つもなく、日本テレビでプライムタイムにあたる日曜夜10時半からのアメドラ枠があったくらい。あとはときたまNHKがアメリカにかぎらず海外ドラマのミニシリーズを放送していたり、深夜枠で過去の名作を再放送しているか、新作でもシブいかんじのミステリーものをやっていた程度に留まっていた(関西ローカルにおいては関西テレビの深夜枠で『ヒルストリート・ブルース』を当時放送中)。

 

スーパー!ドラマTV 海外ドラマ:地球防衛軍テラホークス (superdramatv.com)

1985年4月から一年にわたってNHKで、それも夜7時台に放送されていたイギリスのSF人形劇

当時小学6年生だった自分の廻りでは人気があったが、世間一般的には芳しくなかった模様

ゆえにソフト化はなされなかったんだが、近年はスーパー!ドラマTVにて再放送された

 

そんな状況下での『特攻野郎Aチーム』、1986年2月からは第2シーズンのものに突入して、開始から半年後の1986年春改編期以降も同枠で放送を続けていけたのだが、土曜日の昼下がりなんて吹けば飛ぶような時間帯であったので、春先からはスポーツ中継(プロ野球、ゴルフ、アマチュアの選手権etc)なんかに結構な割合で潰されていき、やっているのかどうかわからない状態になっていく。それでも、深夜枠とは違って、子供を交えてのファミリー層も観る時間帯だけに、その面白さが広く評判を呼ぶことになる。まさに呼び水となっていったのだ。

 

読売新聞 1986年3月8日(土) テレビ朝日午後の番組表

この日は前年最下位どうしによるオープン戦の中継で、番組はお休み

中止の場合はただ「特攻」とだけ記されてあってわかりづらい

 

1986年秋改編期に、それが実を結ぶ。テレビ東京は火曜夜9時枠で『特捜刑事 マイアミバイス』の放送を開始。当時アメリカで現在進行形の社会現象を呼んでたファッショナブルな刑事ドラマゆえに鳴り物入りといったかんじで、信じられない話だろうが、この同じ1986年秋改編期に日本テレビで放送を開始した国産ものの刑事ドラマ『あぶない刑事』よりも抜群の話題性があったほど。ちなみに、テレビ東京はこの1986年秋改編期、火曜10時に30分枠のマイケル・J・フォックス主演によるコメディ・ドラマ『全米熱中テレビ ファミリータイズ』と水曜10時に同じく30分枠のミステリー・ドラマ『ヒッチコック劇場'86』も放送開始するなどアメドラにすこぶる熱を入れていた。

 

1986年10月、「マイアミバイス」 日本での放送を開始 | 茶屋町弥五郎の趣味シュミtapestry (ameblo.jp)

 

日本テレビのほうでは先述した日曜夜10時半からのアメドラ枠で『超音速攻撃ヘリ エアーウルフ』の放送を開始し、それに先駆けて、改編期真っ只中の9月26日に同局の映画放送枠「金曜ロードショー」で第1話にあたる2時間スペシャルのパイロット版も放送したことから大きな反響を招いた。

 

自分にとっての四大80'sアクション・アメドラとは、『特攻野郎Aチーム』、『ナイトライダー』、『特捜刑事 マイアミバイス』、そして『超音速攻撃 エアーウルフ』。どれも甲乙付けがたい面白さだけど、ことパイロット版に関しては『超音速攻撃ヘリ エアーウルフ』のものが跳びぬけて面白いし、その後にあるレギュラー版との差がない高い完成度だとも思う。

 

 

ちょっと横道に逸れて、アメリカのテレビドラマ事情についてここで記しておきたい。連続ドラマは日本のように昔は春と秋の半年ごとにある改編期、いまは1月、4月、7月、10月の1クールごとに目まぐるしく替えて年柄年中放送していくのではなく、アメリカでは、NBC、CBS、ABCの三大ネットワークとも、アメリカの新年度に当たる9月の新シーズンと呼ばれるところから2クール=半年先の終了を目途にしたものを一斉に作って放送するシーズン制のスタイルで、放送が終わった春からはそれらの再放送に充てられたり、スポーツ中継が中心となるスタイルなのだ。で、放送されたものが不評ならば前半1クールのうちに打ち切られて(途中で打ち切られたり、次シーズンのものが作られないことをアメリカの放送業界用語では“キャンセル”という)、2クール目の1月から代替番組が放送される仕組みで、その春までの残り1クールがミッドシーズンと呼ばれる。

 

『ナイトライダー』は1982年9月放送の新シーズンから、『特捜刑事 マイアミバイス』は1984年9月放送の新シーズンからだったのに対して、じつは『特攻野郎Aチーム』は1983年1月放送のミッドシーズンから打ち切り作品の代替番組として投入されたものなので、当初はあまり期待されたものではなかった。しかし、パイロット版を放送した翌週からのレギュラー放送回の第1話が、全米一番であるスポーツの祭典、プロアメリカンフットボール、NFLのチャンピオンチームを一試合かぎりで決着付けるスーパーボウルを放送した後時間帯だったからその恩恵で初っ端から高い視聴率を獲ることができ、瞬く間に人気番組となっていった。

 

この成功に目を付けたのが1984年1月放送のミッドシーズンから投入された『超音速攻撃ヘリ エアーウルフ』であった。ヘリコプターの空中アクションを売りにするだけあって制作費がバカ高いのが難点。なので、放送局サイドとしては、当初から絶対的な面白さは感じつつも、総制作費を安くしたかったから一様に新シーズンから放送を始めての2クール=半年分は作りたくはなく、また視聴率的な失敗もなんとしてでも免れたかったことから放送開始時期のタイミングを探っていた。それで参考にしたのが、というか、まんま真似をしたのが同じアクション・ドラマであった『特攻野郎Aチーム』。その成功をもたらしたスーパーボウル中継直後の後時間帯にパイロット版を放送することで視聴率的な保証を取り付けたというわけ。見事、その目論見は当たって大ヒットドラマとなっていく。

 

ブルーサンダー (TVシリーズ) (superdramatv.com)

『超音速攻撃ヘリ エアーウルフ』と同じヘリコプター・アクションもののアメドラ

しかも、同時期の制作および放送で、1984年1月からのミッドシーズンより始められた

パトカーを警察ヘリに替えただけの凡庸な設定が受け入れられなかったのか

1シーズンのみで打ち切り(キャンセル)の憂き目にあって、望んでいた次のシーズンは作られなかった

日本ではテレビ東京が早々に同年4月からゴールデンタイムで放送したが、やはり全然話題にならなかった

 

『超音速攻撃ヘリ エアーウルフ』は日本でも最高なタイミングを狙って、名作や大作が立ち並ぶような注目度が高い改編期の映画放送枠と伝統のアメドラ枠が連携して話題が冷めやらぬうちにすぐさまレギュラー版を放送開始したことによって、日本テレビでは『チャーリーズエンジェル』や『白バイ野郎ジョン&パンチ』以来の久々に大ヒットしたアメドラとなった。

 

『特攻野郎Aチーム』は依然として土曜午後3時枠で放送が続けられたものの、11月には第2シーズンのなかで放送された2時間スペシャル「必殺!西部大作戦」をパイロット版放送以来の「日曜洋画劇場」枠で凱旋放送するなどして、この一年で付けたその人気と実力を大いにアピールした。「日曜洋画劇場」公式サイトのコラムでも書かれているが、“困ったときのAチーム”と放送をする度に高視聴率を招くことから以降の2時間スペシャルは定番作品となっていく。

 

日曜洋画劇場 コラム | 2013/1/27放送 「特攻野郎Aチーム THE MOVIE」 (tv-asahi.co.jp)

 

そして、件の『ナイトライダー』である。

 

じつは『特攻野郎Aチーム』も『ナイトライダー』も第1話にあたるパイロット版が「日曜洋画劇場」で放送された経緯も一緒。ただ、『特攻野郎Aチーム』は1985年5月のそのパイロット版放送からおよそ半年後の同年10月よりレギュラー放送が開始されたのに比べて、『ナイトライダー』は『特攻野郎Aチーム』よりも早い1984年12月にパイロット版が放送されながら1987年1月のレギュラー放送開始までだいぶ間を置いてしまっていた。この間、「日曜洋画劇場」枠で計5回もの放送を費やしているだが、正直言ってその旬が過ぎようとしていたところに、思わぬ偶然が重なっていく。

 

長寿番組『欽ちゃんのどこまでやるの!』(略称・『欽どこ!』)の後番組で、1986年秋改編期から水曜夜9時枠にて開始した公開バラエティ番組『遊びにおいで』が初回に視聴率6.6%を出して早々に年内打ち切りとなってしまう。その代替番組が『ナイトライダー』のレギュラー放送であったのだ。1987年1月、ここに晴れて、『特攻野郎Aチーム』、『特捜刑事 マイアミバイス』、『超音速攻撃ヘリ エアーウルフ』、『ナイトライダー』が揃うことになり、アクション・アメドラブームの全盛期に入る。

 

1987年1月の国内における新作アメドラ一覧

月曜日 なし

火曜日 テレビ東京『特捜刑事 マイアミバイス』、テレビ東京『全米熱中テレビ ファミリータイズ』

水曜日 テレビ朝日『ナイトライダー』、テレビ東京『ヒッチコック劇場'87』

 *水曜日深夜 TBS『事件記者ルー・グラント』

木曜日 なし

金曜日 なし

土曜日 テレビ朝日『特攻野郎Aチーム』、

日曜日 日本テレビ『超音速攻撃ヘリ エアーウルフ』

 

『ナイトライダー』は視聴率が15%前後と見事な代打ぶりを見せていたのだけれども、代替番組ゆえに一応は春改編期いっぱい4月まで短期の放送予定であった。ところが、当時のテレビ界を揺るがす抜き差しならない事情に巻き込まれていく。

 

それが、1986年12月に起きた、ビートたけしとその弟子らによる写真週刊誌『フライデー』編集部襲撃事件である。彼らは現行犯逮捕後に逃亡のおそれはなしと、すぐに釈放されて元の生活に戻り、悪びれることなくテレビ番組収録を行ったことで、「タケちゃん、私生活まで追いかけられて可哀そうね」と同情していたはずの世間から一転して不興を買ってしまう。事件後に収録したものはお蔵入りにされたばかりか、全面的な活動休止にまで追い込まれた。さらに、実質的には大した被害を出さなかったことから略式起訴で罰金刑の軽い処罰が下されるものと高を括っていたところ、額面通りの傷害罪で起訴されて裁判へ持ち込まれたことによって、1987年春改編期以降でも芸能界復帰の目処が立たなくなってしまったのだ。

 

【Q&A】「起訴」と「略式起訴」とは?(THE PAGE) - Yahoo!ニュース

 

人気絶頂だったビートたけしの出なくなった番組は軒並みパワーダウン。ついこの前の1986年秋改編期にはテレビ朝日の新番組&人気番組を集めての番宣特番まで務めた『ビートたけしのスポーツ大将』は視聴率下落に歯止めが掛からず、1987年春改編期を持って終了することになってしまった(その後、ビートたけしの復帰に合わせて番組再開する)。他にも同局の看板番組『特捜最前線』の終了など、1987年春改編期のテレビ朝日は、1985年の秋改編期に平日帯番組『ニュースステーション』を始めるにあたって以来の大規模な編成替えを迫られることになる。そのため、番組のコマ不足を補うことから、思わぬ高視聴率を稼いでいた『ナイトライダー』は続投することとなり、今度は月曜日8時に異動することになった。

 

1987年4月、「大都会25時」のみた夢は | 茶屋町弥五郎の趣味シュミtapestry (ameblo.jp)

水曜夜9時に放送していた『ナイトライダー』の後番組は、『特捜最前線』の後継となった地味な刑事ドラマ

しかし、視聴率がふたたび一桁台に落ち込むなど編成が壊滅的に失敗する

 

日本テレビの『超音速攻撃ヘリ エアーウルフ』も同様の事情が介在する。本来ならば1987年春改編期で一時休止して、後番組『探偵レミントン・スティール』の放送が終わり次第また再開といった予定だったのだが、1987年春改編期から水曜夜9時枠で開始予定だったビートたけしの冠バラエティ番組が、事件の起訴→裁判で吹っ飛んでしまったことで、その代替番組として、そこに放送時間帯を移しての続行となったのである。こうして、ある意味、ビートたけしのおかげでアクション・アメドラのブームが続くことになっていった。

 

1987年4月の国内における新作アメドラ一覧

月曜日 テレビ朝日『ナイトライダー』

火曜日 テレビ東京『特捜刑事 マイアミバイス』、テレビ東京『俺がハマーだ!』

水曜日 日本テレビ『超音速攻撃ヘリ エアーウルフ』

木曜日 なし

金曜日 なし

土曜日 テレビ朝日『特攻野郎Aチーム』、テレビ東京『全米熱中テレビ ファミリータイズ』

日曜日 日本テレビ『探偵レミントン・スティール』

 

自慢じゃないが、いや胸を張って自慢したいのだが、この1987年4月から放送されていたアメドラを当時全部観ていた。なんとも暇な中学二年生である。

 

1987年春のテレビ番組選び | 茶屋町弥五郎の趣味シュミtapestry (ameblo.jp)

 

というわけで、相変わらず長々としたものになってしまったから、ここらへんで。

 

次回のブログ記事は今週末に日テレプラスでいよいよ放送開始の『誇りの報酬』についてまた書く予定だけど、近いうちに今回の続編を書くつもり。

 

誇りの報酬|日テレプラス ドラマ・アニメ・音楽ライブ (nitteleplus.com)