日本映画専門チャンネルの3ヶ月限定企画「特撮国宝-TOKUHO-」の視聴者招待イベント「燃えよ特撮!祭2013」が、先週8月3日(土)、東京・秋葉原のUDOXシアターで行われた。


このイベントの目玉はなんと言っても幻の特撮作品『東京大地震マグニチュード8.1』の上映。1980年4月17日に日本テレビ系の2時間ドラマの「木曜ゴールデンドラマ」枠で放送されて以来、再放送はもとより、ソフト化もされていない作品である。


シネマトゥデイ映画ニュース 2013年8月4日

「幻のテレビ映画が33年ぶりにスクリーンで上映!千葉真一主演の「東京大地震マグニチュード8.1」」

http://www.cinematoday.jp/page/N0055192


主催者発表では募集定員の8倍もの応募だったとかで、普段あんまりクジ運の良くない自分ではあったが、「絶対観てぇーよぉーっ!!」と気合い溢れる念が通じたのか(笑)幸いにも当選通知メールが届いたので参加出来た。


茶屋まち五郎の趣味シュミtapestry
秋原場駅下車2分という立地なところにあった

それにしても久々に秋葉原に行ったなあ。いろいろと変わりすぎ



「特撮国宝-TOKUHO-」は企画監修&出演の樋口真嗣監督が上映後のトークショーでも言っていたことで、放送作品のラインナップには市販ソフト化されていないような現在視聴が困難な作品を見せたいという意気込みがある。『東京大地震マグニチュード8.1』なんてのはまさにそれなのだが、この御時世では放送という公共性あるものでの披露はまだ時期尚早という判断で見送られたという。そういうわけで、「観たい!」と思う人が能動的に参加するこのイベントのみでの上映と相成った次第。


『東京大地震マグニチュード8.1』は16ミリフィルムによる上映で、その素材はリマスタリング処理はされていないもの(「特撮国宝-TOKUHO-」で放送されるものはリマスタリングが施されている)だったから、退色していて1980年代末ぐらいに観ていた再放送ドラマみたいな画ではあった。しかし、内容はとてつもなく凄くて、かつ素晴らしかった。よくテレビドラマを「映画のような」と表現するものがあるが、この『東京大地震マグニチュード8.1』は「映画そのもの」。スタッフと出演俳優は超一流であったし、実写パート、特撮パート、それから宣伝費までひっくるめた総制作費に1億5千万円を掛け、目玉の特撮には担当した川北監督曰く3ヶ月というスケジュールが割り当てられた贅沢な作品である。


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実写パートの監督、西村潔はテレビドラマ版の『日本沈没』(1974-75)を担当したこともある

なお、作品以外は撮影OK、ツイッターやインターネット等で流すのもOKとのことだったので掲載


自分は本放送当時の1980年4月は小学生になったばかり。ウチでは裏番組の『ザ・ベストテン』を毎週木曜の夜の定番として観ていたのだけど、たぶん宣伝で知ったのか、「東宝の特撮映画みたいなのがテレビで観られる!」と、この日ばかりは自分の切なる願いでこっちを観ていた記憶がある。


さて、このイベントは開演が2時ちょうどで、2時5分から早速『東京大地震マグニチュード8.1』上映開始というスケジュールだったのだが、司会者と樋口真嗣監督のオープニングトークが盛り上がって2分少々押しての上映開始となった。


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先月の当ブログの記事「特撮国宝」 でも示したとおり、『東京大地震マグニチュード8.1』は日テレ系で木曜午後9時2分からの放送で、裏番組にはTBS系で全盛期の『ザ・ベストテン』が君臨しており、それへの対抗策として「木曜ゴールデンドラマ」枠が作られてのオープニング第3弾であった。 今回、『東京大地震マグニチュード8.1』を33年ぶりに観られるにあたって一つ興味あることがあった。それは、「“売り”の東京が地震に襲われる大スペクタクルシーンは何分後から始まるのか?」。で、暗がりのなか、時計を確認したら2時40分近くだった。


上映開始が2時7分。東京が地震に襲われるシーン開始が2時40分前後。だから開始30分強ということに。1分30秒から2分のCMが3本入ったとして9時40分あたりかな。裏番組の『ザ・ベストテン』は佳境に入る頃、2位の歌手のトークか3位の歌手が歌っている頃にぶつけた。『東京大地震マグニチュード8.1』のそれは、やはり「土曜ワイド劇場」枠の10時またぎのヌードシーン挿入のように計算されたものだったのだろうか?、上映後には特撮担当した川北監督への質問コーナーがあったが、そんな編成的なものは知ったこっちゃないだろうな…と思って手を挙げるのは辞めてしまった。


やっぱり聴いておけば良かったかな。いま思うと少々心残りではある。


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川北監督が持っていた作品の絵コンテ

新幹線が地震に巻き込まれるシーンも作る予定だったが割愛された



『東京大地震マグニチュード8.1』 ストーリー

198X年4月、相模トラフの異常が感知され、東京・神奈川を中心とした南関東にマグニチュード8以上・関東大震災規模の地震が近いうちに発生すると気象庁直轄の地震判定委員会で予測される。


すぐさま緊急閣議が招集され、大蔵大臣の岡田英次は切迫する巨大地震をいち早く知ることになる。政府の方針で国民には伏せることにしたが、岡田は愛娘の中島ゆたかをアメリカに避難させるべく、その日の夜出発の航空券手配するよう秘書の千葉真一に命じた。将来、中島と結婚して自分も特権階級の仲間入りしたい千葉はそんな雑用にも忠節を尽くすべく、新宿地下街にある懇意の旅行代理店に訪れた。そこには、恋人からの一方的な婚約破棄で人生に絶望していた女性社員の竹下景子が退職を願い出ていて、支店長の穂積隆信と辞める辞めさせないで揉めていた。


夕闇に包まれた午後5時55分、巨大地震が東京を襲う。地震発生時、地下街の旅行代理店に居合わせた千葉と竹下らが誰も助けに来てくれない苛酷な状況のなかで生き延びる道を模索。崩落で出口が塞がれていた地下街をなんとか自力で脱出したが、地上もまた地獄と化していた。地震から一夜明けた日も混乱が続く。千葉の後輩で救命任務にあたっていた自衛隊員の柴俊夫は我先に救助品を奪い合う凶暴化した被災民の暴動に巻き込まれて死んでしまう。昨夜、千葉は一時避難所で重症患者の救命運搬任務にあたる柴にほんのわずかな軽症の中島を大蔵大臣の娘だからと優先的にヘリに乗せて安全なところまで運ぶよう頼んだが、正論を突きつけられて仲違いしたままだった。被災民の困窮と柴の殉職を目の当たりにして、千葉は野心に燃え、政治を道具に使って特権階級も手に入れようとしていた自分に恥じるようになる。


千葉は東京都立川市に設営されている政府の緊急対策本部に赴き、岡田と中島に再会する。千葉は市井の人々が苦しんでいる状況を訴えようとしたが、岡田は市街の悲惨な現状もまだ見てこないで机上の空論のように将来の立て直しばかりを自問自答するばかり。また、新宿で地震に遭遇して阿鼻叫喚の中にいたというのに中島ゆたかにも特権階級の意識捨てなかったことに腹立てて、袂を分かつ。そして避難民キャンプに戻って竹下と一緒になることを誓い合う。地震で廃墟同然になった東京でも、いつものように陽は昇り、陽は沈み、明日が来る。