1982年、人気ドラマ『西部警察』のリニューアルに際し、その目玉として抜擢された三浦友和。見事その大役を成し遂げ、本来ならば半年の出演契約で殉職降板となるはずだったのが、番組ファンからの多くの嘆願でさらにもう半年の出演延長がなされて、三浦にとってかけがえのない作品となった。しかし、それ以降は状況は一変して冥府魔道に入ってしまう。1983年秋、視聴率100%男の『欽ドン!良い子悪い子普通の子おまけの子』の裏番組で放送した日テレでの主演連続ドラマ『みんな大好き!』はあえなく撃沈。そのドラマ収録前に撮影され、1984年春に公開された主演のSF大作映画『さよならジュピター』は作品的に失笑の渦、そして興行的にも失敗。トップ俳優から陥落していく。

しかし、その傍らで三浦は芸能ニュースの中心にいた。なんてことはない妻・山口百恵との結婚生活を芸能レポーターに追いかけ回され、1984年春の長男誕生後はさらにヒートアップしていった。プライバシーも何もない、その頃の苦汁の日々は三浦自身が書いた著書『被写体』(1999年刊行)に詳しく記されている。題材も良いし、書き口も上出来で、なぜこれを原作として映画なり、テレビドラマが作られないのか不思議なくらいである。

被写体 (マガジンハウス文庫)/三浦 友和

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前置きが長くなってしまったが、三浦が『スーパーポリス』などというふざけたタイトルのドラマに出演するのにあたって、「芸能レポーターが惨殺される」、「殺される理由は同情を引かない」話を作って放送することが条件に掲げたんじゃないかと勘ぐってしまってもおかしくないのが、今回の「黙れ!芸能レポーター殺人事件」。


芸能レポーターがカミソリで惨殺される連続殺人事件が起きる。いずれも目撃者は居ず、犯人は皆目見当が付かない。そこで三浦は元レポーターであるかとうかずこに囮になってもらい、テレビで姿現さない犯人を煽る。当初、あまりにも危険な任務のためにかとうは嫌がっていたものの、三浦に惚れた弱みで引き受ける。しかし、かとうの護衛には三浦自身ではなく、役立たずどもの若手3人組のひとり、卯木浩二とウガンダが担当。もちろん毎度のごとく失敗に終わり、かとうは犯人に襲われて重傷を負ってしまう。囮捜査を強行し、失敗に終わった三浦はタンバから叱責されるものの、以前の回でデンカが拳銃奪われた上に捜査協力者がそれで射殺される惨事に比べれば大したことないので、部下に優しいタンバは三浦に捜査を続行させる。そして、捜査線上に美容室からカミソリを盗んだ元歌手が浮上する。


北詰友樹がその元歌手役でメインゲストで出演。三浦とは山口百恵の引退記念映画『古都』(1980年)以来の共演じゃないかと振り返る。北詰の妻役にゲスト女優の定番、竹井みどり。犯行動機がバリバリにある北詰が容疑者としてマークされるも、捜査が進むうちにノーマークだったみどりがじつは怪しいという展開は『Gメン'75』で観たことあったような既視感が・・・。まあ、竹井みどりの妖しい美貌と怨念を表現出来る目力(メヂカラ)に惑わされるも、なんと犯人は凶器であるカミソリ盗まれたと狂言したオネエ美容師だった。しかも、犯行理由が「ワタシの大好きなスターをよってたかっていじめるんだから。チキショー!」と至極単純なもの。加害者への同情の余地がどうとかいう以前の問題で、まさに三浦の私怨どおりに作られたんじゃないかと思う超展開だった。

さて、この回が放送された7月13日の裏番組が面白い。通常ならば『ゴールデン洋画劇場』枠のフジテレビは、80年代のロック史に残る一大イベント、LIVE AIDをこの夜9時から翌日正午まで独占生中継した特別番組『THE・地球・CONCERT LIVE AID』。マルベル堂でブロマイドが作られた史上初のアナウンサー、逸見政孝を司会に配するも、洋楽に対する知識など全くなく、またアメリカ-イギリスからの中継の他にフジテレビ独自で邦楽アーティストをスタジオに招いて演奏させたり、無駄なトークショー繰り広げるなど、洋楽ファンないがしろにした番組構成でカオスな番組となってしまった。

一方、テレ朝の『土曜ワイド劇場』は、2時間サスペンスドラマのワンパターンの金字塔、キンキン×黒沢年男の「美人殺しシリーズ」から『若妻殺し』で、なんと偶然にもこちらにも北詰友樹が出てしまっている。2時間ドラマは放送スケジュールが確定せずに制作されて、だいぶ前に収録が終わっているのも多いから、まあこれは致し方ないことではあるが、どちらの作品でも北詰が真犯人ではない容疑者だったのは皮肉にも共通してしまった。