今回は若手3人組のひとり、卯木浩二の主演エピソード。森永とともに卯木は当時JAC所属で、ほかにスタッフでスタントコーディネーターにもJACが入っているなど『スーパーポリス』とは結構な関わり具合。だいたい『キイハンター』には千葉ちゃんが出演していたから、考えてみれば納得。

 

卯木は前々年の特撮ドラマ『科学戦隊 ダイナマン』にダイナブルー役でレギュラー出演していて、『宇宙刑事 シャイダー』直後の森永とともにJACとしては“売り出す”手はずだったが、残念ながらこの第8話が放送されていたころにはマスコミ向けに低視聴率で打ち切りされる旨が発表され(制作スタッフの間ではもっと以前から決定事項だったことだろう)、その目論見は失敗に終わる。森永は再び特撮ドラマでもう一花咲かせたり、フジテレビの月曜ドラマランド『女だらけ』で主演するなどチャンスを得ていったが、卯木にとっては『スーパーポリス』がピークだったのは否めない。


メインゲストは芦川よしみ。元は売れっ子モデルではあるが、いまは表舞台から消えてシャブ中に堕ちているという陰惨な役。しかし、前年の日テレ系で放送の木曜ゴールデンドラマ『魔性』は主演の浅丘ルリ子とレズの関係で、彼女に殺された上、バラバラに切断されて食べられてしまうというトンデモな役をやっているから、これぐらいは屁でもなかろう。また、シャブ中といっても刑事ドラマお馴染みのシャブを欲しがる禁断症状と落ち込んでいる鬱描写だけで、それとは反対な元気百杯の躁描写やシャブセックスの場面は皆無だった。

 

その芦川よしみはシャブによる鬱状態で夜中の街をフラフラしていたら、“悪役界のキラーコンテンツ”たる内田勝正が拳銃強盗した直後の逃亡現場で鉢合わせとなって命が狙われる羽目になる。しかし、内田勝正はこの頃不遇なのか、キャラクターを活かし切れていない起用ばかりだ。同年、やはりゲスト出演した『影の軍団Ⅳ』では序盤に早々にやっつけられてしまうし、今回はなんてたって冷酷無比じゃないのだ。シケた相棒がいて二人組で動くのだけど、最後まで相棒を裏切らずに一緒に行動する。こんなの内田勝正じゃない。調子が良いときの内田ならば、絶対裏切って独り占めしたり、窮地ではトカゲの尻尾切りで見捨てたりするのに。それに芦川と卯木を執拗に追い詰める描写などもなく、ここらへんは結構消化不良だった。

 

そして内田に拳銃を売るブローカーの黒人役にまたもやウィリー・ドーシー。第4話からこの第8話までにそれぞれ違う端役で都合三回も出演しているウィリー・ドーシーは、まさに『スーパーポリス』界における伊波一夫か!?、まあそんなエクラン演技集団ネタをかましたところでしょうもない。今回は三回目にして初めてニホンゴによる台詞も登場と、確実にステップアップしているし、いかにもガイジンっぽいニホンゴの喋り方で「おー、これだよっ、コレ!」と。どうせならば、ウガンダよりもウィリー・ドーシーをジミー佐藤役にしてほしかったくらいだ。


まあ、基本的に今回は冒頭に示したとおり、一話まるごと使っての卯木のプロモーションフィルムだ。主題歌である渡辺美里のデビュー曲をBGMにトレーニングシーン映したり、犯人追ってビルの屋上を次々にジャンプしていくJACならではのアクションシーンがあったりと見せ場作っていく。熱心にシャブ中の芦川を立ち直らせる二人芝居も、役者経験を積んでいるだけあってこなれている。

 

が、肝心の“華”がない。

 

顔はベビーフェイスなんだけど、私見としては竹本孝之の劣化版にしか見えない。同時期に『影の軍団Ⅳ』で売り出してもらっている伊原剛(現・伊原剛志)のほうは、顔こそ“華”があるとは言えないものの、アクション俳優らしい風貌だし、樹木希林や橋爪功などバイプレイヤー揃いのなかで臆することのない演技も素晴らしく、その後の活躍を予感させるものだった。

 

さて、話を第8話に戻そう。

 

クライマックスは、隠れている卯木と芦川のもとに内田勝正らが襲撃を仕掛ける。人気(ひとけ)のない港湾倉庫街や廃線になった貨物列車の線路沿いでの逃亡劇は画的にはなかなかのもの。やはり刑事ドラマはこういう場所が似合うヨネ。前回同様、最後は犯人射殺で片を付けたりして一件落着。それから、卯木と芦川の淡い恋愛劇は、お約束の通り、ふられてBANZAI。たとえシャブ中に堕ちていても憧れだった芦川に献身的に尽くした卯木ではあったが、すっかりシャブが抜けて正気に戻った芦川としては「こんな将来性のない男と一緒にいても未来がない」と思ったのか、作り笑顔で故郷の沖縄に帰って行ってしまう。

 

そしてタンバが卯木を慰めるため、スーパーポリスの面々引き連れて歓楽街に繰り出し、「国家予算を使って大盤振る舞いだ!」と宣うものの、ショボい屋台の焼き鳥屋だというホームコメディみたいなオチで締めくくる。