蒲生譲二とは、ネヴィラ71遊星から派遣されたサイボーグで、スペクトルマンの地球における仮の姿である。1971年、大問題だった公害利用して地球侵略狙う悪の天才博士・猿人ゴリの野望阻止のため、通常時は地球人・蒲生譲二となって、公害Gメンの一員として過ごしている。

公害Gメンとは、ウルトラシリーズにおける防衛隊の役割なのだが、前述した公害利用して地球侵略狙う悪の天才・猿人ゴリと戦うために組織されたものではなく、公害調査局第八分室の通称で、Gメンとはガバメント・メンバーであるからして、つまり政府の機関である。

物語は、猿人ゴリの侵略開始とともに、スペクトルマン=蒲生譲二の公害Gメン加入から始まる。またしてもウルトラシリーズを比較対象に出すと、ヒーローは元々防衛隊のメンバーだった者に憑依したり、または隊長から直々のスカウトや周囲からの強い推薦によって加入していくわけなのだが、蒲生譲二の場合はひと味違う。

新宿駅ぷらぷら歩いていて、公害利用して猿人ゴリの侵略開始の情報をネヴィラ71遊星からもたらされると、公害調査局第八分室に押しかける(!)。警察でも消防でも区役所の戸籍課でも、その職業に就きたいからって何のステップも無しにいきなり現場に現れて活動を供にしてもなれるわけではない。少なくても公務員はそうである。

公務員になりたければ、大原簿記公務員専門学校に行って勉強して、願書を出して、筆記試験を受け、面接を受け、向性検査をかい潜り、そして親のコネが効いた口利きがあってこそなれるものである。しかし、蒲生譲二は人事担当でもない調査局第八分室のボスたる倉田室長に直訴して入れてくれるよう懇願。当然のように拒絶されるものの、勝手に調査活動を開始。スペクトルマンに変身したときはその後の“売り”となった弱さだけが目立ってほとんど活躍出来なかった反面、蒲生譲二でいたときはネヴィラ71による的確な捜査情報によって未知の存在と対峙するGメンを導き、結果的にゴリの野望防いだことによりGメンに渋々ながら認められる。そして特撮ヒーローもので唯一とも言える配属辞令証書の受け取りの場面があって、とうとう加入出来てしまう。

こうして蒲生譲二は公害Gメンとして地球守っていくのだが、この地球人の姿での生活を謳歌する。シンパシーを感じるのは、彼が車好きなことである(同時期、放送されていた「帰ってきたウルトラマン」の主人公・郷秀樹もMATに入る前職は自動車修理工場で働くカーレーサーではあったが、その設定は活かされず終い)。

公害Gメンに宛がわれた公用車がなんとスポーツカー。新車で出たばかりのトヨタ・セリカを蒲生は個人専用に、私用にまで使う。さらに途中からセリカに変わって、これまた当時新車で出たばかりのトヨタ・カリーナにも乗る。自分の所有車ではないからそれほど愛情ないかと思いきやそんなことなく、自宅アパートの前で洗車に勤しむほどである。

車とくれば次は女である。公害Gメン(途中で怪獣Gメンに改称)は都合4人もの女性隊員が代わる代わる所属していく。最初期の遠藤理恵は、先輩風吹かせ、蒲生にとってはせいぜい姉貴というかんじで恋愛感情もわかず、早々に途中退場。しかし、二代目の立花みね子とは良好すぎる関係を保つ。元々立花みね子は蒲生と同じアパートの住人で顔見知りで、17話・18話の前後編でサンダーゲイに父親が殺されたことで公害Gメンと行動を共にして、19話からなぜかそのまま公害Gメン入り。蒲生にとっては初の後輩でこの頃から立花みね子に浮かれっぱなし。ふたりだけでパトロールと称してドライブに出掛けることもたびたびで羨ましいことこの上ない。

しかし、幸せはそう長くは続かない。34話・35話の前後編、月の怪獣、ムーンサンダーとの戦いでスペクトルマンは同士討ちとなって火山の噴火口に飛び込む。それでスペクトルマンもろとも蒲生譲二は生死不明となってしまった。公害Gメンが皆悲しみに暮れるなかで一番絶望を感じたのは他でもない、立花みね子であろう。蒲生の紹介で公害Gメンに入り、そしてほぼ公私にわたって蒲生と一緒に過ごすことが毎日であった立花みね子にとって、極めて死亡に近い行方不明となった蒲生がいない公害Gメンにいる理由などなく、離脱してしまう。

その頃、死亡と思われていたスペクトルマンは満身創痍ながらも生きていた。ネヴィラ71の宇宙ステーションに収容され、すぐにでも地球へ戻ろうとしたが、上司のネヴィラ71遊星人に止められる。地球には交代要員が向かい、スペクトルマンは別の星に転勤する事になっていて、地球よりも平和なその星で楽しく暮らせるという。しかし、地球には再び危機が迫っていた。交代要員は間に合わない。上司のネヴィラ71遊星人を説得する。

「私は今やネヴィラ71遊星人であると共に地球人でもあるのだ!」

自分の命を顧みず、地球人助けたいというスペクトルマンの懇願に、上司のネビュラ71遊星人もとうとう折れた。スペクトルマンは地球に帰還して、猿人ゴリが放った怪獣を見事倒す。

うーん、まさにヒーローの中のヒーローだ。蒲生譲二力、自分も身につけたい。