緊張しながらも少しずつ会話を始めると、その男は「僅かな期間でよくそこまで勉強したね」と私の英語を褒めてくれた。
これにはうちの父も珍しくご機嫌だった。
そして「俺が日本球界をやめてアメリカに帰ったら、うちに来て一緒に住んでみないか?」と言い出した。
男の故郷はアメリカ、オクラホマのロートンという田舎町、実家は物凄く大きな牧場だった。
球団の通訳として英語はもちろん、野球や文化の違いをもっと学び、自信を持って推薦してもらえるように、私の父と監督が進めていた話だった。
そしてその年のシーズン終了後、監督も賛成してくれて、当時球団の通訳をしていたJさんと一緒にとりあえず一度そのオクラホマに行く事になった。
Jさんは後にスカウト兼通訳としてジャイアンツに行ってしまう事になったのだが、監督と一緒に私の事を推薦してくれていた。
オクラホマにある牧場はとにかくデカい、一体どこまでが自分の土地なんだ?と言いたくなる程のデカさで、牛や馬がどれだけいるのかもわからない位だ。
大物選手は私に「牧場の仕事をやりながらしばらく一緒にここに住むか?」「気に入ったら数年いてもいい」と言ってくれた。
監督も父も賛成してくれていたが、当時遊びたい盛りの私は正直言うとあまり気が進まなかった。
どちらにせよまだしばらく先の事だし、いつものように、まあなんとかなるさ!と楽観視していた。♪(´ε` )
続く。