筋力トレーニングを長年やってきていて、気が付いた事がいくつかあります。
前回に引き続き今回はまたそのうちの一つを。
スポーツと言うものはどんな競技であれ、ほとんどの種目に大切な要素があります。
それは技術、筋力、柔軟性、そしてスピードです。
他にも先を読む力や、駆け引きなど色々な要素がありますが、特にフィジカル面で大切な最初の四つに注目してみます。
それぞれの競技種目ごとにこの四つのファクターの占める割合は違ってきますが、私がスポーツ選手を指導する上でこの辺りは特に意識しています。
前にも書きましたが、競技のパフォーマンスを高める上では種目ごとに前述した四つのファクターのバランスが大切だと考えています。
今回は人より少しでも重いものを持ち上げたほうが勝ちという、ウェイトリフティングやパワーリフティングについて。
え?そんなの筋肉が多いほうが強いに決まってるでしょ?と思う人は素人です。
(~_~;)
確かに筋肉量は多いほうが通常は強い力を発揮します。
しかしウェイトリフティングは技術やスピード、柔軟性がかなり求められます。
ではパワーリフティングは?
筋力だけと思う人が多いかもしれませんが、実はそうではありません。
技術的な要素は正直あまり必要無いかもしれませんが、実はスピードがかなり鍵を握っていると私は感じています。
一言でパワーと言いますが、それが野球で速いボールを投げる為のものなのか、またゴルフでボールを遠くに飛ばす為のものなのか、それによっても多少違いはあるでしょうが、共通している事はパワー=質量×加速度であるという事。
パワーリフティングにおいても例外では無く、同じ筋肉量であれば少しでも速く筋肉を収縮させたほうが、より重いものを持ち上げる事が出来ます。
どこのジムでも見かける事がありますが、自分の限界重量に近いウェイトを挙げる時には全力で押したり引いたりするが、軽いウェイトの時にはそれに合わせてしまうのか、ゆっくりとした動作で行なってしまっている人がいます。
もちろんウェイトを降ろす時にはある程度コントロールを効かせて重さを感じながら、という事が鉄則ですが、挙げる時には全力で加速的に、という意識でトレーニングする事は非常に大切だと考えています。
軽いからゆっくり挙げる、というような癖を普段の練習からつけてしまうと、いざ高重量になった時に全力で押したり引いたり出来なくなる可能性があるからです。
種目にもよりますが、私は筋力トレーニングをする際、重量に関係無くほぼフルパワーでウェイトを挙げるようにしています。
そのほうがより重いウェイトを挙げる事が出来るし、しなやかな筋肉になるからです。
50kgのベンチプレスをゆっくりと挙げるのと爆発的に挙げるのとでは、どちらの挙上回数が上回るかはある程度トレーニング経験がある方ならわかるでしょう。
だから重量に関係無く運動のイメージは全て同じであり、軽いウェイトであれば爆発的に速く、重くなればなるほど全力で挙げようとしても筋肉の収縮がどうしても遅くなる為、結果としてスピードが無くなってくるだけなのです。
私は軽いウェイトでの爆発的なスピードトレーニングを昔から重要視しており、毎回では無いがパワー系種目では、MAXの半分程の重量でのスピードトレーニングを取り入れています。
こうする事でMAXに近いウェイトを挙げる際にも、筋肉が爆発的に速く収縮しやすくなるからです。
この一連の動きはプライオメトリクストレーニングの一種であり、特にスピードが要求される競技種目を行なっている選手には非常に有効です。
筋肉はゴムの性質と類似点が多く、伸ばされると元の形に戻ろうとして縮みます。
ですからこの筋肉がストレッチされた状態でタイミング良く収縮させる事は大変効率が良く、理にかなっています。
またストレッチさせる事で神経細胞にも刺激が入り、収縮司令を強く伝達できるようになります。
難しい話ですが、これらはスポーツPNF理論に基づいたトレーニング方法でもあります。
私はこのトレーニング理論を10年程前に、あるスポーツ科学の権威である先生から高い授業料を払って学んできました。
様々なスポーツ選手を指導する上で、パワーリフティングやボディビルの理論だけでは偏った方向に行くかもしれないと考えたからです。
その後私が指導してきたチームは甲子園で上位に入賞したり、バスケットクラブ対抗戦で三年連続優勝したりと、私のストレングス指導が多少なりとも役に立ったのではないかと思っています。
パワー=パフォーマンスという考え方は間違っています。
大切なのは種目ごとに必要な要素のバランスであり、それを崩すほどの筋力を得る事はかえって競技パフォーマンスを低下させてしまう事にもなりかねません。
ましてや遺伝的に欧米人に劣る肉体の私達日本人が、筋力だけで彼らと勝負するのはどう考えても無理があります。
長くなりましたが、今回は筋力トレーニングにおけるスピードについてお話をしました。^ ^