ケメルに滞在中、IBSAパワーリフティング協会の方に今大会の全てのリザルトが欲しいとお願いしたら、後日添付ファイルとしてEメールで送ると言ってくれていた。
少し前に届いていたのだが、JDPFやJPCに提出するレポートやら大会写真の送信など、帰国してからの作業に追われていたのでなかなか見る事が出来なかった。
今日ようやくそのリザルトに目を通したのだが、O選手の階級のメダル争いは本当に紙一重であった事を改めて理解した。
結果だけを見ると、
一位 日本 125kg
二位 ロシア 122.5kg
三位 ウクライナ 120kg
となっているが、第一試技からの経過と選手の体重、そして四位の選手に注目して欲しい。
一位 日本
体重 67.08kg
第一試技 117.5kg ○
第二試技 122.5kg ○
第三試技 125kg ○
二位 ロシア
体重 65.1kg
第一試技 115kg ○
第二試技 120kg ○
第三試技 122.5kg ○
三位 ウクライナ
体重 66.41kg
第一試技 115kg ○
第二試技 120kg ×
第三試技 120kg ○
四位 ウクライナ
体重 67.13kg
第一試技 110kg ○
第二試技 120kg ○
第三試技 127.5kg ×
試合中、メダル争いはこの四人になっている事を私は知っていた。
第二試技が終わった時点で日本が一位、しかし四位のウクライナが第三試技に127.5kgを申請してきた。
「どうする?重量変更するなら今だ!127.5kgを挙げれば体重差で金メダルだ!」という思いが一瞬頭をよぎった。
選手は私を信頼して全てを任せてくれている。
勝たせてやりたい、しかし125kgでさえ今までに練習でも挙げた事がない重量だ。
おまけに第二試技は成功したものの、あまり良い内容では無くて赤が一つついている。
どうする?時間は無い、その時日本を出発する前から選手に何度も言っていた事を思い出した。
「初めての国際試合なんだから欲張り過ぎず、順位など気にせず自己記録更新を目指しましょう!」
そうだ、122.5kgだって自己新記録なんだ、順位にこだわって127.5kgで失敗して自信を無くすより、125kgを成功させたほうが今後にも必ず繋がるはずだ!
一瞬のうちにこのように感じて、申請した125kgは変えないと決心した。
もし四位のウクライナの選手が127.5kgを成功させ、こちらが127.5kgを失敗していたら体重差でロシアにも負けて三位だった事になる。
私は普段の練習から極力潰れ癖はつけないようにしている。
今考えると、このポリシーもあの一瞬のうちに頭をよぎったのかもしれない。
どちらにせよ勝ったのだ、私の力など微々たるものだが、周囲を気にせず私を信頼してくれて自分の力を出し切った選手を本当に誇りに思う。