私はスクワットやベンチプレスなど、プレス系の種目があまり強く無い。
だがレッグエクステンションやバイセプスカール、トライセプスエクステンションなどのアイソレーション系の種目では割と高重量を扱う事ができる。
これは種目によって変化する参加筋群のバランスや、可働域、運動量などの差によるものであると考えている。
一般にベンチプレスやスクワットなどが強いと言われる人達は、低い身長、分厚い胸、太くて短い腕、大きな臀部、太くて短い脚をしているという特徴がある。
加えて狂ったようなブリッジを組み、ラインいっぱいに握るグリップ幅でお腹に降ろすようなベンチプレスをするのだからバーベルが動く距離は極僅かだ。
ルールの範囲内のテクニックだと言えばそれまでだし、それが悪い事だとも思わない。
ただベンチプレスで重いバーベルが挙げられるから胸筋や腕の筋力が強いとは限らない。
実際に私よりはるかにベンチプレスは強いが、脚を使わないダンベルフライは私より全然できない人間を何人も知っている。
また私は様々な競技種目の選手を指導してきたが、ベンチプレスやスクワットが強くなれば単純に競技のパフォーマンスが上がるなどとは思っていない。
むしろボディバランスを崩してマイナスに作用するケースすら少なく無い。
実際に競技で大切なのは、柔軟性やスピードを中心としたトータルバランスである。
それらを妨げないという条件で初めて筋力が活きてくる訳だ。
よく、筋力=パワーと勘違いしている人がいるが、それはとんでもない間違いである。
パワー=質量×加速度であり、いくら重いバーベルが挙げられようが、スピードが無ければ速く走ったり、速いボールを投げたり、鋭い打球を生み出す事は不可能だ。
イチローと清原を比べて見れば一目瞭然だろう。
バカな野球指導者が、選手に意味もわからずによく筋トレをやらせているが、パフォーマンスが上がるどころか一歩間違えば怪我をしてしまう。
ベンチプレスが強くなったところで150kmのボールなど投げられるはずが無い事に気付いていないからだ。
投手に必要なのは下半身で生み出した運動エネルギーを、骨盤と肩甲骨の柔らかい動きを使い、肩の筋力を使って腕の振りを加速させ、手首と指先のしなやかな動きでボールに伝えるという事だ。
その際テコやムチの原理が働くので、高い身長、長い脚、長い腕があるほうがよりボールに伝えるパワーが強くなる。
ダルビッシュなど典型的な良い例だろう。
長くなってしまったが、ベンチプレスが強ければパワーがあるとは私は思っていない。
スクワットが強ければ速く走れる訳でも無い。
大切なのはその競技種目ごとに必要な身体作りであり、ただ単に重いバーベルが挙げられるようになればパフォーマンスが上がる訳では無い。
必要なのはそれぞれの競技種目や目的に合った、正しいトレーニングを行なう事であると思っている。