私が住んでいたワイキキのコンドミニアムのすぐ隣にアパートがあった。
二階にある私の部屋のベランダからは、そのアパートがすぐ目の前で、ベランダからベランダまで飛び移れるのではないかと思える程の距離だ。
ハワイは日中は暑いものの湿度は低くて、夕方以降は涼しくて本当に快適だ。
だから夕方や夜には良くベランダに出て、心地良い風に当たるようにしていた。
ある日ベランダにいたら向かいのアパートのお姉ちゃんが煙草に火をつけようとしていたが、ライターのガスが無くて火がつかないようだった。
すると私に向かって火を貸してくれと言ってきた。
私は煙草を吸わないのでライター類は持っていないと答えた。
これが最初のやり取りだったが、その後も友達数人とベランダでビールを飲んだり煙草を吸いながら良く私に話し掛けてきた。
たわいも無い内容のやり取りだったが、私もビールを飲みながらベランダ越しに彼女達との会話を楽しんでいた。
また時々食べる物を投げてくれたりしたから、私もバドワイザーを投げて上げたりした。
今でも覚えているのは、ハワイ産まれの彼女達はほとんど島から出た事が無いらしくて、是非日本に行って新しい暮らしがしたいと語っていた事だ。
こんな素晴らしい島に住んでいるのに?無い物ねだりなのかな?私などはハワイでずっと暮らしたい位なのに!と不思議に思ってしまった。
私が日本に帰る前の日の夜、偶然にもベランダに数人でいる彼女達と逢えた。
明日の朝ここを出て行くからと伝えると、それは寂しくなるわね!是非またこのオアフ島に来てちょうだい!と言ってくれた。
私も彼女達に、もし日本に来るような事があれば連絡しておいでよ!と連絡先を教えて上げた。
このベランダでのやり取りは、細やかではあるがハワイ滞在中の楽しみの一つになっていた。
このベランダでハワイの夜風に当たりながら飲んでいたバドワイザーの味は、今でもハッキリと覚えている。^ ^