お伝えした通り、選手村で他国の選手からもらった食べ物をうっかり口にして見事に当たってしまった。
日本選手団のうちそれを食べたのが五人程なのだが、私を含めて三人がやられた。
私はそれを食べて数時間後に腹痛が始まり、激痛で二日程まともに眠る事も出来ない状態。
結局しっかりと治ったのは日本に帰ってきてからだった。
コーチの私はともかく、後の二人は選手である。
一人はなんとか試合に出場したものの調子は最悪、結局期待されていたメダルには手が届かなかった。
もう一人は私がセコンドを担当する選手なのだがひどい下痢が全く収まらず、試合開始ギリギリまで様子をみたが止む無く棄権する事になってしまった。
自身にとって初の国際試合でマレーシアまで来たのに本当に残念でならない。
日本選手団の団長からもくれぐれも飲食物には十分気を付けるようにとあれ程言われていたのに。
本当に高い授業料を払わされてしまった。
この悔しさは次回の大会できっちり晴らしたいとみんなで誓った。
今回私がセコンドを担当した選手は他に二名いて、いずれも国際試合は初めてであった。
結果としては厳しい判定の中、二人とも三本中ひとつ成功させるのがやっとであったが、女子の選手は運も味方して銅メダルを獲得する事ができた。
なにより失格にならなくて本当に良かった。
今回の国際試合の判定を見ていて気付いたのは、バーベルを真っ直ぐバランス良く降ろしたり挙げたりするのはもちろん、また胸でしっかりと静止させてわずかなブレや反動も認めない、成功させる試技こそ正に胸筋を中心にバッチリと効果的に効かせるトレーニングに当てはまるという事である。
今更だが一番胸に効くボトムのおいしいところをバウンドなどを使って楽をして挙げても効きは甘くなるという事を改めて実感した。
下半身の力を使い、狂ったようなブリッジで胸を浮かせて胸の上でバウンドさせるやり方で挙げてもただの自己満足に過ぎない。
今回国際試合の厳しい判定の中かなりの試技を見たが、ただ見るのではなく、「今のは傾きをとられて赤がついた」とか「胸の上でしっかりとバーが静止していなかった」など自分がジャッジになったような視点で試技を観戦した。
どんな事でもそうだが真剣に観察していると、それまで見えなかったものが不思議と見えてくるようになるものだ。
真剣に取り組んでいれば自ずと知恵が出てくる、中途半端だと愚痴ばかり、いい加減だと言い訳ばかり。
今回はマレーシアに滞在中本当に腹痛や頭痛で苦しかったがチームの一員である以上責任がある。
他のメンバーには本当に感謝している。
もし独りだったら耐えられなかったかもしれない。