まだ新入社員の頃、職場の敷地内の建物に出向してきていたおばさんの話。


その人は私よりも25歳ほど年上だったように思う。

コロコロと丸くてバッチリ化粧、男性には優しいけれど私達には鋭い視線。

仕事も何をしているのか知らなかった。

ある時、先輩が「あの人、小児科の駐車場に車を停めたまま不倫に出かけていて注意されたらしいよ」と。

どんな人でも不倫とかしちゃうんだ……と思っても、まぁ私には関係ない。

挨拶程度の関係性と、フルタイムとパートタイムの違いもあって会うこともそうそう無かった。

その頃すでに一人暮らしをしていた私。

突然、社内のロッカールームまでその人が私を追ってきて「あんたの住んでるとこ分かっちゃった〜」と。

たからなんだとその時は愛想笑いで済ませたけれど、その夜から、なんと、いやらしい電話が鳴り続けた。

最初は何を言っているのか全く分からず、中には「うわ!ほんとに出た!」とかいうのもあり。

最後に会話した人との会話から、どうも何かの媒体に、私の家の電話番号が書き込まれていたと。

そういえば来ているはずの電話料金の請求書が来ていない!

つまりは郵便受けから盗まれてやられたのだろう。

頭に血が登って、勢いのまま、当時窓口がまだあったNTTへ行き、事情を話して電話番号を変え、請求書の宛名も全く関係のないものにしてもらった。

仕事が早かったのか、その日から全く変な電話は来なくなった。

翌日同期たちにその話をしていて、あの不倫していると言われている人が怪しいのではないかとなった。

なんせ、その人は私を遠くからニヤニヤと見ていたりしたから。

血気盛んな私は、負けてたまるかと余裕の表情を見せつけた。

するとあの人は職場でなにかやらかした様で居なくなっていた。


今ではすっかりおばあさんになっているであろうその人を哀れに思う。

人を貶めて一時楽しかったとして、何かを得られたのだろうか。