春の涙を
いつもの玄関で靴を履く。
そんな私の後ろからは、笑顔の母の声が聞こえる。
そんな母からの「がんばれ」は、少し目に染みて、そのまま振り向かずに私は言った。
「いってきます」
私は今、ゆっくりと歩き出す。
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早咲きの桜は既に散り、青々しい葉がいっぱいに茂っている。
下を見ると、様々な花々が、新しい場所への期待に蕾を膨らませているようだ。
これまで毎日通っていた長い通学路の道は、風の中で空に伸びている。
何年も歩いたこの道。泣いたり笑ったり、たくさんの出来事が頭をよぎる。
この道で、あの子と夢を語り合ったな、と思い出したりして笑顔がこぼれた。
ふと音が鳴って開くスマートフォンには、父の慣れない少しくすぐったい、親指の絵文字が光っていた。
いつもの駅に着いて買う切符は、いつもとは反対の方向だ。
改札を通る足取りが少し重たいのは、今までのこの街での事が頭の中で流れているからだろうか。
必死になって掴んだ夢。
そんな夢の先で、今度は私が愛を返していくんだ。
そんなことを考えながら、大きなバッグを抱えて電車に乗り込む。
長い電車の旅路で、ふと友達がくれた手紙を開く。
「離れ離れじゃないから!!」
「心は繋がってるよ。」
「また絶対会えるから。」
そんな手紙に、堪えきれずに涙があふれる。
私は今、春の涙を拭いて歩き出したんだ。
そんな旅立ちの日の空は、眩い青で輝いていた。