「誰だって最初はそうよ。いいからあんたは待ってなさい。いつか拓実君から言ってくるわ。あんたが好きってね。あんたも遅くなったけどようやく春が来たんだね」母。
「春か。今の私はこの暑さどっか行って欲しい。それだけだね」私。
「ま、暑いのはうんざりだけど、動物園のデート楽しまないとね。二人とも健康な若い人なんだから。周りもびっくりするわ」母。
「どうして回りがびっくりするの?」私。
「そりゃあんたと拓実君見たらびっくりするわよ。美男美女のカップルなんだから」
「お母さんもまだ酔ってるね。実の娘にそんなこと言うなんて」
「酔ってるのはあんた。これまでのこと振り返ってみなさいな。あんたに振り返る人どれだけいたことか」
「それ全部お母さんに返します。お母さんだって美人じゃない、今でもずっと綺麗って思える、お母さんて」
「ま、翔子は若いんだし恐れるものなしだし、あとは楽しんで行けばいいよ。拓実君と一緒にね」母。母との会話はどうも続けて行けそうになかった。拓実君一辺倒な母の勘違いがそのまま進んでいきそうだったので。
「お母さん、有難う。じゃ私寝るね」私。
「沙織とは話さないの?あの子もお前と話したそうだったけど」母。
「ゴメン、姉さんには謝っといて。私眠たいの」私。
「そう、残念」母。
「おやすみなさい。あ、お母さん、私明日は6時半には起きると思うけどいい?」私。
「大丈夫。起きてます。おやすみ」母。
「ごちそうさまでした。おやすみなさい」と言ってリビング出、部屋に行った。部屋は暑かった。でも、流石にエアコンは遠慮し、扇風機かけた。扇風機だけでも十分。でも気温は32度。もうここにはパソコンもないので私は昔の本取って読む。太宰治「斜陽」。懐かしいな。没落貴族、かず子、直治、その母、最期の貴婦人・・・。そんなこと目で追いながらいつの間にか眠ってしまった。バタンキューだ、ホント・・・。
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