それからだ。何故だか分からないが川村の加藤へのいじめが始まったのだ。
「キャッ!」いきなり加藤の胸を触って
「デッカイおっぱいだな。90はあるんだろ?」
とニタついて言ったりスカートめくりやシューズを切ったり両親のことをバカにしたり胸が大きいのをいやらしいと言ってみたり・・・。川村の加藤への態度に愕然とした。
加藤は・・・川村たちの嫌がらせに何も言えず席に戻って声を押し殺して泣いていた。僕は勿論加藤に声をかけるどころか振り向きさえもできなかった。僕の背中に突き刺さるような鋭い痛みを、加藤の痛みを感じていた。
そんな加藤と僕を見て川村は・・・。
場所は変わって加藤美紀のオフィス。こじんまりとしたオフィスだ。AV業界も楽じゃない。
「こんにちは」
「あら、ミキちゃん、あなた大丈夫だった?」女性事務員が訊いてきた。
「何が?」
「ミキちゃんのこと聞いてくる男がいてさ、どこに住んでるんだとか本名は何て言うんだとかしつこくてね」
「そんなの相手にしないからいい」
「相手は普通の大学生みたいだったけど」
「どこにでもいるような人なら何も出来ないでしょ」
「ふー。ならいいけど。で今日はどうしたの?」
「撮影なんでここで待ち合わせることにしたの」
「お待たせ、ミキちゃん」カメラマンらしい男が入ってきた。そのままミキとカメラマンは出ていった。その跡を追うようにして待ち構える男がいた。それは僕。事務所に電話したのも僕。・・・彼女が加藤なのかどうか確認したかったのだ。そしてもし彼女が加藤本人なら・・・。僕に今更何が出来るかなんて分からない。分からないが加藤に謝りたかった。無心に・・・。彼女は近くにあるスタジオに入っていった。
撮影中は彼女が何してるのか分からなかったし知りたくもなかった。いろんな恥ずかしいポーズで撮影してたんだろう。
しばらくして彼女の仕事も終わったようでスタジオから出てきた。僕は彼女の跡をつけた。完全な犯罪行為。ストーカーだもんな。が、彼女は回りにはほとんど無関心な様子で、あるマンションに入っていった。遂に彼女の住まい突き止めた。声をかけたいという思いもあったが出来なかった。あんなことがあった以上彼女だって忘れてしまいたいはず。それよりもどこか退廃的な彼女の様子が気になってそのまま引き返した。
【いつ死んだってかまわないもん】彼女のテレビの発言がどうしようもなく大きく僕の前に立ちはだかっていた。そんなこと言わせるようになったのは僕のせいか・・・?
(続く)