遠い星355(帰郷編Ⅲ-16) | たろすけ日記
「どうぞ」マウスをおとんに渡した。

「ええっと、どうすんや?」

「ほら、今やったらスイカがクエストやから畑に行ってスイカ植えたらええんよ」

「ああ・・・」おとんはクリックしてスイカを植えた。が、すぐに止めた。

「どしたん?」

「俺には無理やな、こういうの」

「どして?」

「めんどいわ」

「めんどい・・・。そっか。・・・残念やね。やけどしよったらのめり込むで」

「ワシはええ。こんなんするん時間の無駄や」

「いろんな仲間が出来て面白いんやけどな」

「ああ、ま、アリガトな。ええ経験させてもろた」おとんとピグの出会いもあっけない結末で終わった。

しばらくテレビ見てたが、ニュースやってて特に目立つこともなかった。

と言ってる間に裕美がお風呂から出てきた。

「一番のお風呂有難うございました」出てくるなりさっぱりした表情で言った。うん、裕美ってどんなときでもいてくれるだけで有難い。こんな真夏でも綺麗。おとんもおかんも志奈子も何だかホッとした感じになってる。もう裕美もウチでは家族の一員やな。言えないけどそばかすがちょっと目立ってた。それがまた少女っぽくてたまんないんだけど。もちろんこんなこと口外できない。しっかり黙ってた。

「気持ち良かった?お疲れさん。お母さんそろそろご飯」と言っておとんも返す。

「次は誰入る?」

「私入る」と言ってきたのは志奈子。

「ほな入れ」おかんからのご飯取ったおとんはそのまま箸つけて言う。

「あの~、ドライヤーお借りしていいですか?」裕美が言ってきたので、そのまま志奈子が洗面所にあるドライヤー取ってきて

「裕美さん、はい」と渡す。

「有難う。お父さんお母さんテレビが聞こえなくなるかもしれませんがドライヤー使ってかまいませんか?」

「ああ。髪濡れとったら風邪引くで」

「裕美さん、ウチにいるときは気兼ねなんてしなくていいのよ。いくらでもドライヤー使ってね」

「有難うございます」と言って裕美がドライヤーかける。俺自身裕美がドライヤーかけるのってほとんど記憶なかった。確かもう半年以上前のあの梅田のホテル以来じゃなかったか?裕美のかけるドライヤーは特に騒がしくもなく裕美らしい慎ましさのこもった音が響いてる。

「何か静かやね」と裕美に言うと、

「え、何が?」と裕美が返す。

「いや、何でもない」

「じゃ入るね」と言ってお構いなく志奈子が出て行った。

しばし休息。うるさいのがいなくなってホッとしてる。おとんはテレビ見てる。相変わらずニュースやけど。おかんは洗い物終わって食卓に腰かけてお茶飲んでる。俺はというとソファに座ってテレビ見てた。裕美も同じくソファでドライヤーかけながらテレビ見てる。つまんないニュースばかりだけど。

「ふーん、消費税アップか。何か大変やね、これから」テロップに映ったの見て言うと、

「国も借金まみれやからな。お前がジジイになる頃には年金もなくなってるかもな」

「そんなん言うの止めてや。まだ就職もしてへんのに」

「ゆうてかてお前の年金も国から払えって来たんやで」

「国民年金?」(続く)