「どないしょ、・・・恥ずかしいけど、・・・指きりしたら信じてくれる?」こんなときに俺って何考えてるんだろうって思いながら、右手を彼女に差し出した。
「ハイ!」と彼女も即座に右手を出し、お互いの小指を絡めて、
「指きりげんまん、嘘ついたら針呑ます~~」と小声で囁き合った。そのまま二人笑ってしまった・・・。とてもじゃないが現実的じゃない。けど、裕美、彼女となら何でも出来るって思った。
そうこうしてると裕美が改めた表情で、
「小田島くんと付き合ってみてね・・・」
「うん」
「少しずつだけど、分かったの」
「な、何が!?」
「小田島くんなら信じていけるって」
「そりゃ、嘘つくことはないと思う」
「思う?」断言せなあかんらしい。
「横山さんの前では絶対嘘つかんって!」
「本当に?」
「もちろん!」
「じゃ約束して!」
「何を!?」
「これから私のこと名前で呼んでね」
「は、はぁ・・・?」裕美が続いて左手差出し、
「指きりしよ!」今度は左手差し出してきた。
「うん」と俺も左手出す始末。
「指きりげんまん、嘘ついたら針呑ます~~」彼女主導の指きりか。悪くない。また二人で笑ってしまった。両手の指切りも悪くないって思った。
「両手で指きりしたからもう大丈夫」
「効果あんのんやろか?」
「私たちだけの指きりだもの、大丈夫」
「そやね・・・、でも、アリガト」
「何が?」
「言いたくないこと話してくれてさ」
「さ、鮫くんだから・・・言わなくちゃいけなかったんだ」
「俺も、ゆ、裕美に話せることは話したつもり」
「お互い様ってことね?」
「そ、そうやね!・・・」
ぎこちなさ過ぎる。リードする立場の男である俺が終始受身で終わってしまうなんて、情けなさ過ぎる、ってあとあと振り返れば反省することばかりだった。
おまけに今だから笑えてしまうのだが、何か終始睨めっこしてたような気がする。
こんな経験のない俺なのだからこんなもんかっても思った。
逆に裕美の告白は俺にとっては有難かったと同時に一歩も二歩もリードを任せることになった。最初にお茶誘われたときからリードされたもんな。
でも、それはそれで十分だった。俺にあって裕美にないもの、その逆も当然あるけど、それをひとつひとつ共有していって二人がひとつになる、どんな関係であろうとも、そんな関係作り続けていくことが何より一番の俺の望みだし。
と、こんなことがあってますます二人の距離は縮まった。
おまけにお互いのこと名前で呼び合うことになった。
ホント言うたら俺の「鮫行」って名前好きやない。「鮫ちゃん」なんて呼ばれたらもぉお笑いの世界やん。
実際裕美は俺のこと「鮫君」と呼ぶようになった。「鮫ちゃん」でなくて助かってはいるけどね。
俺は彼女が呼び捨てでかまんて言うから「裕美」で通してるけどね。
でも、でもでも恥ずかしかったけど、ホント良かった。
これからの毎日が間違いなく充実していくのははっきりしてると思えた。
(続く)