「例えば?」裕美。
「うーん、そうだな、昔のノートパソコンとかスーファミとかPS2みたいなゲーム機とゲームソフト、あとDVDとかCDとか本とかいわゆる趣味の世界のモノばかり」志奈子。居たたまれなくなってビール注いで飲む。もうご飯食べてるからあまり入らないけど。
「そういうモノって誰でもそうなんじゃない?私だってそういうの貸し借りしたことないよ。ゲームはよく分からないけど、DVDとかCDなんて自分で買えば済むことじゃない」裕美。
「誰かて自分のもんは大切やし大事やろ。お前かて、例えばもう辞めてるけどテニスのラケット友達から貸してくれ言われても貸さんやろ。それと同じでみんな自分のモンは大事なんや」俺。
「やから裕美さんも気ぃつけた方がええよ。おにいからお前は俺のモンなんやとか言ってきたらシャクでしょ」志奈子。馬鹿なことを。人とモノとは違うやろが。俺が執着強いんはモノだけや。それには触れず、
「・・・とりあえず、急な結末になったけど、ちょっと整理するわ。明日30日はUSJ、31日は志奈子入れて3人で姉ちゃんとこ、1日は私と難波、2・3日は裕美さんと志奈子とで梅田・難波、、4日は墓参りと六甲山で泊まり、5日は花火ってことになるか。これでええか?」俺。
「予定考えてなかったからこうなったけど、これでOK。でもね・・・志奈子ちゃんには悪いけどこれだけは言っとくね。鮫君は私だけの人だよ」裕美。家族のいる間でこんなこと言うなんて裕美も大胆というか変わってるな。普通こんなこと俺の前でこそっと言うことやないのかな。おまけに昨今の女性像からかけ離れてるような気もする。それは裕美だから納得できる発言ではあったけど。
「裕美さん、それマジ!?」志奈子。志奈子がそう言うのも分かる。
「裕美さんも大胆やね。暑い時期やのにますます暑ぅなる。お前も良かったな、裕美さんからこんなこと言われて」おとん。そやな、何かますます暑くなってきた。
「そろそろお風呂入れるから裕美さん先に入って」おかん。機転が利くのはやっぱりおかん。変な方向になりそうだった流れを切ってくれた。
「あ、お母さん、お風呂入れます。それと洗い物は私しますからゆっくりしててください。お世話になってるのに何もしないと心苦しくなりますから」裕美。
「でもお風呂掃除裕美さんしてくれたじゃない。それで十分だけど」おかん。
「彼女の好きにさせてあげなよ。お湯は俺が入れる。裕美さんは洗い物よろしく」と言って風呂場でお湯の設定して出し始めた。リビング出るとモワッとしてる。いつも通りの暑さは変わらない。戻ると裕美はせっせと食器洗ってた。おとんもやっとご飯食べ始めてる。すき焼きの残り皿に詰めて。いつもより酒量少なかったな。そういやおとんももう50なんだよな。人間誰でも年取るのは早いなって思いつつ、
「10分くらいでお湯入る。それまでに洗い物終わる?」俺。おかんと志奈子も食卓で手持無沙汰げな様子でテレビ見てる。
「ええ。大丈夫。でもお風呂私が一番でいいのかな」裕美。
「かまんかまん。ウチのしきたりってかどこの家でもお客さんが何でも一番やろ。お腹もパンパンやし俺風呂出たらすぐ寝よ」俺。
(続く)