遠い星181(裕美の家編Ⅱ⑤) | たろすけ日記
「あー、私もすっかり忘れてた。み~んな鮫君のせいなんだからね!」

「はいはい、ゴメンなさい。明日でも一緒に申し込みに行こう。そしたら毎日一緒に過ごせるよ。免許取るのって結構お金かかるんやね。そのためのバイトだったの。流石に全額は無理だったから少しは親に負担してもらうけど」

「鮫君って偉いなぁ。私は免許費用なんて親が出してくれるもんだとばっかり思ってたから、ちっとも考えてませんでした。私の方こそゴメンなさい」

「これからはお互いの生活観の違いをどう克服していくかってのが一番の問題かもね。何とかなるとは思ってるけど」

「鮫君が思ってるほど私の家って恵まれた家じゃないよ。鮫君はお金って大事なのかな?」

「ないよりはあった方がいいって。でも裕美ってこれまで生活で困ったことなんてなかったろ?」

「物質的なってことなら、そりゃないよ。でも、今は・・・」

「俺も物質的には問題なく過ごしてきた。でも置かれた家庭環境とか違ってるって思う。俺は極々普通のサラリーマン家庭だけど、裕美はブルジョワだもんね。あ、これ以上言うのはもういっか。止めとく。ただ俺自身裕美のこと誰よりも分かってるつもりだし、だからこそ裕美を不幸にしたくない。その、責任感っていうか俺がしっかりしなきゃ何も上手く行かないんだってのがよく分かってる」

「ゴメンね。また真面目な話になっちゃった。まだそんな話するのって早いかもしれないけど、でも、鮫君がそういう真面目なこと考えてくれるから私も安心してるんだ。そろそろ家が見えてきたね。続きは晩ご飯終わってから私の部屋でしよ?」

「え、いいの?部屋行って。ま、今日はゆっくりさせてもらうよ。でも、裕美の家が見えてきたらちょっと緊張してきた」

「いつも通りでいいの、さぁ、入りましょ」

裕美の豪邸の外門開けて入りしばし歩いて玄関にたどり着いた。いつ見てもスゴイ家だよな。俺から言わせてもらうと、って言うより誰が見ても、裕美って超上流家庭のお嬢様だよな。そりゃメンタル面では不幸な過去があったけど、俺から言わせてもらうと些細なことだって思えてくる。お金があるからこそ何でも思い通りに生きていけるんじゃないのか?もちろん俺は拝金主義でもないし金の亡者でもないし、こんなことは口が裂けても裕美には言えないことだけどね。あ、話が反れたか。

「うん、入ろうか」今日は俺がゲストのせいか裕美が玄関を開けてくれた。ゆっくり入った。

「ただいま」玄関の物音と裕美の声に察したのか、お母さんが出迎えにやってきた。

「小田島です。先日はご馳走有難うございました。今日もわざわざ呼んでいただき有難うございます」頭を下げたあと、「これつまらないものですが受け取ってください」とバームクーヘン渡した。

「こんにちは。あら、有難う。ま、お上がりなさい」受け取ってもらって安心して、

「はい、失礼します」靴をそろえて上がった。いつもなら、玄関のすぐ右にある応接間に行くのだが、今日はそのまま真っ直ぐリビングに案内してもらった。玄関の前のホールも広いがリビングも広いな。わっ、でっけぇテレビ!50インチはあるんじゃないか!?おまけにグランドピアノがデンと置かれてる。裕美もピアノしてるんだったよな・・・おっといけない、こういうときはキョロキョロしたらダメだったんだよな。
(続く)