遠い星151(真実の裕美編21) | たろすけ日記
「あふぅ・・・眠くなってきた。そろそろ寝ようか」

「うん。もう寝よう」おずおずと裕美は左手出して俺の右手握った。「手繋いで寝ようね」

「あぁそうしよう」流石に今日は指切りもなく、そのまま手を繋いで眠った。俺たちの長い夜はこうして終わった。俺の優しさって、結局は優柔不断で自分の意見が言えないからそう見えるだけなんだよ・・・。だから上辺だけなんだ。でも急には無理だけど少しずつ自分の言いたいこと言っていくようにしようと思いながらうとうとして眼を閉じた・・・。俺が気難しい奴になったら裕美はどう思うんだろうな・・・?

・・・翌朝眼が覚めると、驚いたことに裕美はまだ眠っていた。ぐっすり眠れたのは確かなことだけど、そんなに疲れてたっけ?それとも、裕美は俺への告白が出来て安心したからまだ眠ってるのか?話したくもない過去言って踏ん切りつけたから?

時刻は7時だった。裕美は俺の方に顔向けて眠っていた。裕美の寝顔見たのはあの年末年始の飛行機の中以来だった。あんときは短い時間だったからだろう、・・・気付かなかったが、裕美の睫ってこんなに長かったんだと、ずっと見とれてた。どこかの有名な彫刻にでも出てきそうな端正な顔立ち、決して触れてはいけないような峻厳な美しさに満ちていた。知らなかったがそばかすが裕美にあった。ほとんど目立たないそばかすだから可愛いって思った。

・・・その触れてはいけない裕美に俺は左手を差し出し、裕美の頬に触れた。寒い朝だが、裕美の頬は暖かい。その暖かさに俺は痺れそうになった。と、思ってたら、裕美が眼を覚ました。裕美はトロンとした表情を浮かべ、俺の顔見て、

「・・・おはよう」と言って俺の左手を右手で握り締めニコッと笑った。とても可愛いその仕草に、

「おはよう、眠れた?」裕美の挙動は何でも楽しみたいって真に思った。

「うん、ぐっすり眠れた。今何時なの?」

「7時過ぎ。お腹空いたろ?」

「ううん、起きたばっかりだし」
何か違うな。感動的な日の翌日なのに、何かいつもと同じ調子。俺としてはもう少し衝撃的な会話が出てくると思ってたんだけど。ま、いいか。裕美の調子に合わせていこう。起きたばっかりだから頭の中は空っぽかもしんないし。俺の予想と違ってたがちょっと残念だったけど。

「鮫君、ハイ!」突然裕美が掛け布団の下からニョキっと両腕を伸ばしてきてきた。裕美の意思表示何となく分かったので、そのまま裕美の布団に移って抱きしめた。裕美も心得た?もので同じように抱き返してきた。朝だからこれ以上するとまた怒るだろうってことは分かってたから、そのまましばらく抱き合ってた。言葉なんて要らないのかもしれない。あれしたから、どうなのか分からないが、何するにしても一心同体みたいな感覚があった。

「昨日はアリガト。やっと俺も男になれたって感じ。その分責任感も増えたけどね。でもあれなかったらいつまでもいつもの奥手の俺でいたんだろうな」幸福感に満ちた調子で言ったけど、裕美はというと、

「あれって何のこと?」ってとぼけたこと訊いてきた。
(続く)