「・・・鮫君、私だけ見て。鮫君も若い男の子だから私よりもずっと綺麗で素敵な女の子とこれから付き合っていくかもしれない。でも、今は私だけ見て欲しいの。そしたらきっと気持ちが軽くなれるから」
「俺は裕美と知り合って、他の女の子なんて全然興味もないし、ずっと裕美ばかり見てきた。これまでは、ごくごく普通の毎日だったから何も意識することなく普通に接することが出来た。でも、これからはとても、とても特別な時間だよ、俺たちにとっては」
「意識し過ぎだよ。いつも通りでいいんです。私に出来るんだから鮫君にも出来る筈。だから笑って、お願いだから」
「ハハハ・・・」
「違う違う、そんな固い笑いじゃなくて思いっきり大笑いして!」
とはいうものの梅田に着いてしまった。
「・・・続きはあとでやろう。取り合えず荷物フロントに預けて、いや、確かチェックイン14時だったからそのまま部屋で休んでもう少し暗くなってからブラブラしようか?今の俺の顔あんまり見て欲しくないし、暗くなったら少しは落ち着くかもしれない」
「じゃ私は鮫君が笑うまで部屋にいるよ。今の鮫君じゃどこ行ってもつまんないもの」
「分かった分かった。とにかく着いてきて」電車から降りてそのままホテルへと向かった。もっとも2分もしないうちに着いたけど。チェックイン済ませて鍵を受け取り7階の部屋までエレベーターで行き入室。梅田の喧騒が嘘のように静かな部屋だ。これなら落ち着いて過ごせるか?
「ま、とにかく着いた。どっちに寝る?窓側?それとも廊下側?」
「私は廊下側でいいよ」
ホテルの窓側は西に面しており、まだ日差しは出ているが冬のため限りなく弱かった。窓側のベッドに腰掛けて、ふー、とため息ついた。裕美も同じく腰掛けた。んー、静か過ぎる。テレビのリモコンからテレビつけた。もちろんつまんない番組ばかりやってるが少しは賑やかになったのが良かった。
「もう少し落ち着いてから出ようか?その前にホントに俺笑わすの?」
「そうです!鮫君が笑ってくれないと今晩台無しになっちゃうもの」
「ここでないとダメ?」
「眠るまでに笑ってくれたらいい」
「じゃ、こうしよう。実は今晩、居酒屋行こうと思ってるんだ。少し酔ってきたら笑えると思うんだけど、それでいい?」
「うん、いいよ。でも居酒屋ってどうして?」
「裕美とじっくり話せるとしたら少しはお酒入った方がいいと思ってね。カクテル一杯位なら問題ないよね?その分食べたらいいし」
(続く)
