「わぁ、アリガト」と言って裕美は俺から離れPCを見始めた。ワンルームだから同じ部屋に今いるのだが、裕美とは少し距離が離れた。俺はお粥をゆっくり食べ始めた。そうだ、アメーバのマイページなら「ペタ」「きたよ」が見れるから知らせておこうと思い、
「ブログの前に俺の『ペタ』と『きたよ』見といて。こないだ言った恋愛関係の読者も併せていないってのが分かるから」
「うん・・・」裕美の方は既に俺のブログにかかりつけの様子で俺の言葉も耳に入らないようだ。そんなにここで見たいもんかな?フフ・・・思わず俺も笑ってしまった。今度は逆に俺が裕美を眺めるようになった。
裕美のどことなく砕けたようでいていつもの真面目な顔つきに妙にうっとりしてしまったり、そう思って恥ずかしくなったりする俺に自己嫌悪しながら食べた。
食べ終わった。うん、満足した。空っぽの胃も悲鳴を上げず満足してるようだ。いつもならこのまま豪徳寺まで一緒に行くのだが今日は出来ない。あ、その前に裕美自身もお腹空いてるんじゃないか?
「ご馳走さん。とても美味しかった」
「そう、良かったぁ!味見できなかったけど残さず食べてくれたんだ!」
「でも、もうこんな時間だし」時計見て19時回ってた。「もう暗いけど帰れる?裕美もお腹空いてるよね?」
「あ、もうこんな時間なんだ。でも、お腹は別に空いてないよ。って、そろそろ帰らなきゃいけないか」
「今日はこんなんだから送ってあげられないけど、大丈夫?」
「高田馬場からすぐだから全然大丈夫。鮫君こそ大丈夫?」
「俺は寝るだけだから何も心配ない。それよか裕美の方が心配」
「大丈夫よ、こんな時間ならまだ人もいっぱいだし。でもブログもおしまいだな。残念・・・。お鍋に少し残り入ってるから明日も食べてね。その丼洗って帰るか」と言って俺の丼を取って流しで洗ってるの見て裕美が愛おしくなってきた。このまま帰って欲しくない、いつまでも俺といて欲しい。
裕美のいる流しに行き、
「裕美」と囁いた。
「何?」キョトンとしてた裕美が俺の顔見るとハッとしてしがみついてきた。そうなんだ、裕美と離れるのが辛いんだ。どうしてこのまま離れなければならないのか?まだ熱はあるもののいつもの自分以上に裕美に焦がれてしまった。
いや、でも、俺の自制心が強く立ちはだかっていた。こんな付き合いを裕美に求めている訳じゃない。俺の理想の交際とは魂同士の付き合いなのだ。身体の結びつきではない・・・。でも・・・。
そのまま口付けした。・・・いつもの裕美がここにいる。俺だけの裕美がここにいるんだ。
その気持ちが今は全てだった。理性的な感情は消えてしまっていた。裕美には悪い、こんな付き合いしか出来ない俺。許して欲しい。土下座しろって言われたらいくらでもする。
が、今回軽く触れたに留めた。何よりも俺は今インフル患者なのだ。裕美にうつったらどうしようもない。それに、食べ終わった後歯磨きしてなかった・・・。俺の理性はまだ残っていたんだ、うん、それで良かった。・・・しばらく二人抱き合ってた。裕美は黙ったままだった・・・。
(続く)