「ただいま!」
時刻はお昼前になろうとしていた。二人重そうなカバンを転がしながら玄関開けて叫んだ。奥からバタバタ音が聞こえて、
「お帰り、お疲れ様」とおかんが出てきた。
「こんにちは、またお邪魔させていただきます。これ良かったらどうぞ」裕美が挨拶してお土産渡した。俺もと思って、
「はい、俺からも」と渡した。「もう餅つき始めてるの?姉ちゃんとかも来てるの?」
「まだ始まってないよ。菜摘たちが来てから始めるけどね。まぁお上がんなさい、横山さんも疲れたでしょう?」と言って俺たちは靴を脱ぎ、リビングに入った。おとんもいた。食卓で新聞広げてた。テレビは付けてるが誰も見てない。志奈子は自分の部屋にでもいるのかいなかった。
俺たちはそのまま荷物を部屋まで持って行き、下降りておとんに挨拶。
「ただいま」
「こんにちは、すみません。またお邪魔しちゃいます」
俺たちを見ておとんは無愛想な表情から一転して温和な顔つきになって、
「ああ、お帰り。久しぶりやな。飛行機混んでたか?」
「うん、満席やった。父ちゃん今日から休みだったっけ?」
「おぉ、今日からや。銀行もやっと正月迎えられる気分やな。ま、元気そうで良かった。無事帰れたしな。横山さんもお元気そうで。あんじょうこいつの面倒みてもらってます?」
「いいえ、今は教えていただいてるのは鮫行さんからの方が多くなってます。私の方がよっぽど子供ですから」
「何かあったん?」
「何もない。・・・疲れたからちょっと」と言ってリビングのソファに裕美を案内し、「まだ時間あるからコーヒーでも作るよ。ホットでいい?」
「あ、私が作る」
「いいよいいよ、勝手は俺の方が分かってるから。そこ座って」とにかく裕美に落ち着いてもらおうと思って、ソファに座ってもらって、そのまま俺はおとんのそばの台所でコーヒー作った。ちぇっ、インスタントしかないや。残念だったが、ないよりはましと思い黙々とお湯沸かしなおしてインスタントコーヒー作って裕美に持っていった。
「お待たせ」そのまま俺も座ってるとおかんが来た。何してたんだろう?俺たちほっといて・・・。ちょっとイラついたが口には出さず、
「あぁ、ゴメンね。ちょっと用事してたものだから」
「何してたの?せっかく彼女連れて帰ってきたのに」
「餅つき機物置から出してたの」
「言ってくれたら取りに行ったのに」
「鮫行も疲れてるだろうから、遠慮したの。息子思いでしょ?」
「別に疲れてなんかないから言って欲しかった。そのぐらい手伝わせてよ」
「これからお餅作るのが忙しくなるから、それからお願いするね」
「はーい」そんな感じでおかんとの会話も終わった?手伝いはもちろんするけど。
(続く)