「それは言いっこなし。・・・とにかくお兄さんからも俺たちのこと認めてもらおう」
「・・・鮫君、さっきの続きなんだけど」
「何?」
「私と土日過ごしてくれるの?」
「え?」
「さっき言ったよ」
「そうだっけ?うん、言ったよ。でも、ここまで言わさないでよ。もう分かってるだろ、俺の気持ち」
「ごめんなさい・・・」
「いや、俺も言い過ぎた、ゴメン。さてそろそろかな?」時計を見ると11時。でもお兄さんは来ない。「もうそろそろ来てもいいんだけどな」
「私に似て遅れること嫌う人だったけど・・・」
そのままぼんやりと窓の外眺めてた。裕美も黙ってた。
お兄さんは10分ほど遅れてきた。店の入り口入ってキョロキョロしてるのを見つけて、
「お兄ちゃん、こっち」と裕美が手を振った。気がついてこっちに来て、俺は立ち上がった。遂に来たんだ、裕美のお兄さん!
「遅くなって悪い。会社から電話入ってきて、ちょっと電話してた」と言って俺を見た。「えっと、彼が・・・」
「初めまして、小田島と申します。今日はお忙しい中、有難うご・・・」
「いいよいいよ、堅苦しいの苦手なんで。裕美の兄の智(さとし)、ヨロシク」と言って座った。まだ突っ立ってる俺を見て「小田島君だっけ、座りなよ」と言ってくれたので座った。座って智さん見ると、テレビで見たときと同じ結構なハンサム。背が高く眼がくっきりして鼻筋も通り痩せ気味で肌が赤黒い。誰が見ても印象に残る顔立ちのお兄さん。羨ましいって正直思えた。
「お兄ちゃん、いつも忙しいのに有難う。今日は付き合ってる小田島君に会ってもらいたかったの。最近あんまりお兄ちゃんと話も出来なかったし、今日はゆっくり話したいな」と言って裕美は俺を見た。
「はい、お兄さんとは初めてお会いしますが、裕美さんと付き合って半年間、いろいろありましたが、お兄さんからも僕たちのこと認めていただきたく今日お越しいただきました」チラッと智さんは俺を見たが、意に介さずって感じで、
「もうお腹空いただろ?何か頼む?」といってメニューを回した。俺たちは眼を合わせて、
「そうですね、何か注文しましょう」と言ってそのまま俺たちもメニュー見て決めた。そのまま智さんが注文しまた俺を見た。
「・・・裕美も暗い過去があったけど、ま、いいんじゃない?俺は俺だし裕美も裕美だしな。お前も最近明るくなってきてるし何も言うことないよ。この彼氏のせいか?これでいい?」
「有難うございます」何かやけにあっさりしてる。けどこれで了解もらえた?
「あ、煙草吸うけどいい?」と智さんが言ってきたが俺たちは頷いた。「悪い、これないと駄目なんだ。でさ、肩抜きなよ、小田島君だっけ。何かこっちまで緊張しちゃうよ」
「すみません、いや、でも初対面ですからやっぱり・・・」
「最初だから緊張するのかな、まぁ、気楽にしてよ」
「はい、有難うございます」
「だからそれは言いっこなしだって」
「はい、ごめ・・・、いえ、なしですよね」少し笑ってしまった。裕美の言ってた冷たい人じゃないじゃん。まだ分からないけど。
(続く)