「何かデパートでいい商品あったかぃ」

「沢山あったね、収納用具で・・・」



何を言ってるのか、まったく解らん。

あぁ、で、こぅ、で??指示代名詞が多いっつーの。



「で、写真は?」

「撮ったら怒られるだろう。」



は?何言ってるの?

写真くらいとって来ないで、これからどうやって中国で売れるか意見交換するんだよ。

俺の前職はどんなところでも隠して写真撮ったし、床面積や座席数も目測で計算したし

音まで取って市場調査してたんだよ?

これだからサラリーマンは。。。



「しかし、いい商品が沢山あったな。母さん、他に見ておくべきものはないか。」



本当にこれから自分で商品見定めて輸入できるのか、親父は。。。
「とっても綺麗な方!肌もとっても綺麗」


まんざらじゃなく、母は嬉しがる。

ビジネスパートナーは、本気でそう思ってるようだ。


どっかのブランドのアクセサリーもたんまり頂く。

見た目、偽物なのか本物なのか、解らない。

箱とかちゃちぃし。ブランド戦略で箱も中国らしくちゃちくしてるのか。このC社は。

まさかな。



「こんなに綺麗だと、愛人の一人や二人いるんじゃないの?」



母の動きがピタッ。

笑顔だけに。



食事後、父とパートナーは新宿デパートへ下見に。

母と息子は帰宅。電車でゴトンゴトン。

帰宅後の母の剣幕。



「失礼しちゃうわ!」

「その時に言えばいいじゃないか。」

「私は英語を聞き取れても、あまりしゃべれないの!」



なるほどね。だから笑いだけでも頑張ったのか。



「そう勘違いされるぐらい綺麗だって言いたかっただけだろうさ。」

「あ、そうかッ。そうだよね。このジュエリー、あげたい女の子いないの?」



やれやれ。

親父よ、パートナーに新宿案内する以前に、家族をフォローしろよ。。。





「日本に連れてくから。」


一ヶ月ぶりの帰国で、パートナーを連れて来日する親父。

本当に自分勝手で、周囲の迷惑を考えない。

一人では何も出来ないくせに、迷惑なやつだ。



息子と母さんとで新宿集合。

親父と34歳女性ビジネスパートナー。


女性とは聞いていたが、若くきれいな女性だ。

親父よりも俺の方が歳は近いな。



「にーはぉ」



大学卒業後から使ってない中国語と英語で会話。

俺の語学能力も落ちてないな。使い慣れ始めればすぐ親父を抜けるんじゃないか。


「たーしーたいつぉんみん。(この子、賢いじゃなぃ)」



そうだろう、そうだろう。俺頭いいだろう。

お主みたいに働かずして収入を得てる小娘には知らない苦労をしてんだ、俺わ。



「こいつはまだまだ勉強が必要だ。俺の人生の半分も生きてない。」


ムカ。
「そろそろアイディア固まった?」

「お前は本当にせっかちで困る。慌てて出したアイディアはすぐに廃退する。」


まぁ、そういうのは解るが。

せっかくマスコミが中国に注目しているんだから。

俺の人脈も使えばいいだろ。


「そのときは活用させて貰うよ。」


・・・。俺の人脈もその程度か。。

一時帰国で帰国してんるんだから、できる事を考えろよ。

経営者は休みなんかないんだぞ。



「何から取り掛かるのさ。」

「ビジネスパートナーにも突かれてる。」



笑ってる場合じゃなくてさ。へへっじゃなくてさ。ちょっと考えようや。



「まずはホームページを作るかな。ホームページで集客すれば、なんとかビジネスになるだろう。」



おぃおぃ、そんな簡単に集まるもんじゃないけどな。

でもビジネスパートナーがもう居たんだ。驚きだ。
「心配するな。お前と一緒で俺はずる賢いんだよ。」

実家のバルコニーで、中国のまずい酒を片手に、夜空にぷかぷか。

身辺整理で日本に一時帰国の身分で、ずいぶんゆとりのある生活をここ数日過ごしている様子。



ほぅ、良く言うわ、この親父わ。

俺の方が母に似て金まわりはうるさいし、細かいよ。

流行に疎くて、自分の貯金が幾らあるのか知らない親父とは違う。


「前の会社で中国を一番しってるのはこの俺だぞ。レポート一本書くアルバイトを貰った。」


なんだ、それ。たいした金にもならんでしょうに。


「月一本で45万だ。まぁその仕事は数ヶ月だけどな。

 あと、退職金を投資に回したり、年金の支払い合わせれば結構な額になる。」


は??

俺の給料より高いぞ。なんだそれ。

自慢でもないが、俺でも日本の平均所得より高いのに、お払い箱の親父でもその上行った・・・。


「お前は心配する事、一つもないから、自分の仕事をがんばれ。」


大きく出たな、この親父。