はじめに
私が人の心を揺さぶる話をするようになったのは、塾講師をしていた時のことでした。
当時、関西で灘高校などの超難関校受験の塾で教鞭をとっていた私は、
「どうしたら生徒がやる気になってくれるだろう?」
「どうしたら自分からペンを持って勉強してくれるだろう?」
ということを日々考えていました。
塾の講師というのも、実際には人気商売で、生徒からの支持が給料に直結する厳しい世界です。
そのため、講師もテクニックを磨いています。
しかし、生徒たちはテクニックだけではやる気を起こしてくれませんでした。
テクニックよりも大事なもの、それは「心を動かす」ことだったのです。
そのことに気づいてから、私は授業のたびに生徒たちにいろいろな話をしてきました。
「勉強は何のためにするのか」「幸せって何だろうか」
「あきらめないこと」「努力の本当の意味」「感謝する気持ち」など、人生で大切なことをいろいろな角度で伝えました。
そうした話に心を動かされた生徒は、もう何も言わなくても勉強し始めます。
そうして、みな第一志望校へ合格していきました。
そして、いつの頃からか
「先生、いい話をしてください」と、現在社会人になっている塾の卒業生たちが集まってきました。
ただ、そんな彼らを見ていると、なぜかとても疲れています。
仕事がつらい、仕事をやめたいと私に漏らします。
そんな彼らが求めているのは、直接的なアドバイスではありません。
それよりも、かつて私が話したような話でした。
「先生、感動して帰りたいんです」
「あの時のやる気をもう一度取り戻したいんです」などと言う彼らに、何とか元気になってもらおうと、いろいろな話をします。
すると「先生、もう少し今の仕事、がんばってみる」と、自分のフィールドへと帰っていきます。
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私は現在、過去の経験を生かして教員の方や塾の講師の方向けに「生徒にやる気を出させるセミナー」をしています。
また、企業の経営者や幹部の方に「社員のモチベーションをアップさせるセミナー」もしています。
おかげさまで、これまでに延べ5万人以上の方と出会い、多くの方が涙してくれました。
人が変わる瞬間というのは、そこに「涙」の存在があります。
あふれた感情は、誰にも止めることができません。
しかし、多くの人がそうした感情を押し殺して生きているように思います。
私は、そんな涙が人を変えてくれると信じています。
今は苦しくても、どうにもならない状況に置かれても、人は何かのきっかけで変わります。
そして、そこには必ず涙があります。
人は、涙の数だけ大きくなれる。
この小冊子から、あなたが何か少しでも感じ取っていただけるものがあれば、私も幸せです。
木下 晴弘