日本人は売り込まないのに、なぜ信頼されるのか
私は営業の仕事がとても好きです。お客様の企業を訪問し、仕事を獲得することが主な業務内容ですが、外国企業の営業場面を見る機会に恵まれることがよくあります。
そしてここでも、日本のやり方との違いに驚きました。
諸外国の一般的なセールス方法は、自己アピールから入ります。
ひととおり挨拶を終えたら、自社の商品資料を見せながら、いかにその商品が他社と比較してすぐれているか、お客様にとってどれくらいメリットがあるかをアピールします。
要するに、「この商品が必ず御社の役に立つ」 と、スタートの瞬間から主張するのです。
そして、最終的に 「だから買ってください!」 と相手を説得し、商談を成立させようとします。
自分をアピールするというスタイルは、異業種交流会や各種勉強会などでも同じです。
たくさんの人たちに自分を印象づけるため、名刺交換をしながら、自分は何ができるか、やってきた経歴や実績をアピールします。
そこでは、いかに、自分はあなたの役に立てる人間であるか、すごいビジネスマンであるか、と思わせることができるかが問題なのです。
ところが日本人は、まったく正反対のアプローチをします。
日本人は自分や、自社を売り込んだりせず、まず、相手の情報収集をしようとします。
相手はどんな会社なのか、どれくらいの規模で、何人ぐらい働いているか、どんな理念をもち、何を目指しているか。
主力商品はどんなもので、どういう顧客がいるか・・・・。
そういったことを、初回の訪問時に、時間の許す限り、相手から聞き出そうとします。
つまりアピールから入るのではなく、ヒアリングから入るのです。
これは外国人にとって理解しにくいスタイルです。
私も最初は、
「え、どういうことなんだろう? これでは商品のことをわかってもらえないし、売れるはずがない」 と疑問に思っていました。
しかしわたしはリクルート時代、トップ営業マンといわれるような先輩でもあるスペシャリストから、日本式営業テクニックを教えてもらい、ようやくその人の営業のコツをつかむことができました。
先輩は、ともかく相手の話を聞いて、自分たちの商品のアピールをいっさいしないことだ、と言うのです。
ひたすら相手の話を聞いているだけです。
しかしそうしているうちに、何が生まれるか。
しばらくして、ようやくその意味がわかりました。
相手のなかに 「信頼」 が芽生え、相手が興味しんしんでわれわれの会社のことを聞いてくるのです。
向こうが、われわれの商品について聞きたがるのです。
この人はわたしの話に耳を傾けてくれる。
わたしの会社に興味をもってくれている・・・・そういう意識が、相手に対する信頼につながり、単なる取引先ではなく、パートナーだと思ってもらえるようになるのです。
そしてこちらの話も聞いてみたいと思うようになるのです。
「日本人が世界に誇れる33のこと」 ルース・ジャーマン・白石 あさ出版