悲嘆教育(grief education )
 悲嘆のプロセスを積極的に克服した人は,人間的に大きな成長を遂げ,それからの人生により成熟した対応ができるようになる。
患者が亡くなる前から家族に悲嘆教育を行うとともに,患者が亡くなったあとも遺族への援助に積極的に取り組むべきであろう。これは予防医学の面からも極めて重要な課題であると考える。
 これからの医療関係者は,患者へのケアとともに,その家族の抱える苦悩や遺族の直面する喪失後の課題にもっと考慮する必要がある。
ある意味で,私達の人生は喪失体験の連続であるといえる.成長するにつれて多くの出会いと別れを経験する。
こうした喪失体験に伴うのが,グリ-フ・ワ-ク,すなわち悲嘆の仕事である。
このグリ-フ・ワ-クを十分に達成しないと,悲嘆から病気になる可能性が大きい。

以下,悲嘆のプロセスをあげる。     
  1)精神的打撃と麻痺状態
     身近な人(肉親など)が死ぬと,先ず放心状態になる。
  2)否認
     死亡の事実を否定しようとする。
  3)パニック
     否定できないことを認識すると,次は混乱状態に陥る。
  4)怒りと不当感
     次に人は物に当たったりする。
  5)敵意と恨み
     人を責めたり,恨んだりする。
  6)罪意識
     自分を責める。
  7)空想形成,幻想
     もしかしたらまだ死んではいないのではないかなど考える。
  8)孤独感と抑うつ
     抑うつ的となる。
  9)無関心
 10)あきらめ 
     事実を認め仕方ないと考える。
 11)新しい希望:ユ-モアと笑いの再発見
     前向きに考えることができるようになる。
 12)立ち直りの段階
     新しいアイデンティティの誕生(新しい自分を形成する) 

以上のようなプロセスを経て人間はしだいに成長していくものであると考える。
故に“Humor ist, wenn man trotzdem lacht”
  (ユ-モアとは,にもかかわらず笑うこと)
という自己風刺のユ-モア感覚を磨くことが大切なのである。
ユーモアとは安っぽい駄洒落やジョークとは全く違う。
そして生まれつきの才能でもない。
真のユーモアとは,度重なる失敗を経て獲得していくものである。
『自分は今苦しんでいる,しかし相手に対する思いやりとして笑顔を示す』それが真のユーモアであると考える。