苦手だ。
苦手だった。
シキタリはまだええけど、わけのわからん伝統が嫌いだった。
中学校に入ってしばらくするとボクは学校へ行かなくなった。
小学校とは違う。
明らかに違う中学校の環境に馴染めなかった。
弱さが溢れ出た。
ある朝、父親に殴られ、蹴られ、髪の毛を掴まれ、家から放り出された。
嗚咽しながら学校へ行った。
完全に遅刻だ。
授業も始まっている。
下駄箱にはいった上靴を手にとった。
久々に見る上靴はまだ綺麗だった。
突然、後方から声をかけられた。
『おお‼︎マーチ‼︎久しぶりやんけ‼︎』
ケンボウだった。
ケンボウは明確なほどに短足でエラが“片桐はいりクラス”の同級生。
ケンボウは続けて言った。
『バリやばいって‼︎遅刻してまうで‼︎』
ボクはすぐに『もう遅いわ‼︎遅刻や‼︎』と関西人をした。
額から汗を垂れ流したケンボウは『腹イタ、腹イタ。ピシャゲリ、ピシャゲリ。朝から、バリやばい。朝飯、ケーキとラーメン食うたらピシャゲリや。』と言いながらお腹をさすっていた。
ベタな表現だ。
ボクは朝からケーキとラーメン?と思いつつもケンボウのフォルムが気になって仕方なかった。
制服のズボンを可能な限りまで上げ、ベルトでギュウギュウにしめている。
いわゆる、“男塾”のスタイリングだ。
その代償はズボン8分丈とチンポジ丸見せ。
しかも全部右寄せポジション。
3点右寄せ。
2球体のうちの1球は境界線を越えている。
もう、チンポジ云々のレベルではない寄せ方。
この時のケンボウ・スタジアムはきっと…
9回裏、3対2、ツーアウト、ランナー満塁。
ピッチャー振りかぶって投げた‼︎
ストライク‼︎
これでバッター追い込まれましたね。
ツーストライク、ノーボール‼︎
あれ?ってか、ノンボール?
一方、隣のスタジアムでは…
審判が何やらもめていますね。
君‼︎レフト・スタジアムのボールだよね?
戻りなさい。
ルールを守りなさい。
常識ですよ。
レフト・ケンボウは言いました。
顔面をシワシワにしながら下から見上げて言いました。
ルールて何すか?
常識て何すか?
人体の不思議展。
大改造‼︎劇的ビフォー。
奇跡体験アンビリバボー!
ひとりで何個するつもりやねん。
チンポジ3点右寄せて。
フィクションか思うぐらいにノンフィクション。
この時点で“ミライ☆モンスター”だ。
ボクは“右寄せ収納の匠”を見て声を出して笑った。
久しぶりに人に会ったかと思えば、声を出して笑うことになった。
少しだけ“学校へ来て良かった”と思えた。
あの朝、ケンボウに会っていなければボクはどうなっていたのだろう…
ひきこもり、学校で誰とも会話をしない、後ろ向き、3点右寄せ、丸ポジ、短足、エラ呼吸、薄毛…想像は無限大。
今は、シキタリも伝統も、“はっはぁ~ん、なるほどね”と思いながら仕方なくやってみるけど、『これ、わけわからん。なんやこれ。意味あるん?意味ないこと好きやけど、これはアカンやつやわ。て、ことで、今から廃止‼︎それと微妙なハゲには、ちゃんとハゲてるで‼︎て言うてあげること‼︎』と言いながら、ハゲかけの天然パーマネントスタイルをキープしつつ“右寄せ”に気をつけています。
リレーでバトンをもらうとき…
関西でエスカレーターに乗るとき…
車で道路を走行している車線が…
右。
全部、右。
そんな人、気をつけや。
あんさんも“匠”かもしれんで。
【スメリーロッカー】
word/song NOSHI
アイアムベリースリーピー
レディース&ジェントルマン
バラというよりもマラのほうがオッケー
アイアムホットテンパー
ショートレッグロッカー
体は腐っても心は腐りません
人はどうして悲しいのかな
目から汗が止まらないぜ
アイムウォーキングスローリー
スメリーロッカーウェイ
プリーズシングアソング
スメリーロッキンソング