●●は酒を飲むと歯止めが利かなくなる。たとえば有り金を全部使ってしまったり、吐いてトイレを汚したことすら忘れるほど飲んだり。1才に満たない子供がいても。
急病で家族が病院へ行くことになったら?
添い寝をして泥酔し、赤ちゃんを窒息させてしまったら?
何を引き合いに出しても、そこまで酒を飲むメリットはない。一度飲んだら止まらなくなるんだから、では飲まないでほしいと言うしかない。
家でトイレに1時間以上立てこもり、汚物まみれにしたのを見て、特別なときに節度を持って飲むこと以外では、酒をやめて欲しいと伝えた。
それからは表面上、やめたように見せかけていたが、彼はたまに終業後に飲みに出かけていると友達づたいに聞いた。
酒が悪いわけではないけれど、私は子供が小さいのに酒を飲むメリットがどうしてもわからなかった。私が酒を飲んでも幸福感を抱かない人間だからかもしれない。
子供の話をしても、やめない。隠れてでも飲みたい。
依存のしかたが怖いと感じた。
たとえば誰かが家に酒を持参して遊びに来て、残った酒を彼はしっかりと覚えていて、翌日には帰ってすぐに冷蔵庫に飛びついて、飲む。
私は独身時代、たまに飲みたいなと思って酒の小瓶を買っても、すべては飲みきれないし、大抵が残って、料理にでも使おうかなと冷蔵庫の片隅に放置してしまい、すっかり酸化しては捨ててしまっていた。
キャバクラに行って酔って帰ってきて、サービスや嬢の質がどうとか管を巻く高圧的なところも、イヤだった。
田舎の飲食店のサービスの質を、重箱の隅をつつくようにねちねちと指摘しては蔑む。楽しい時間を過ごすためにお金を使ったんじゃないのかと矛盾を感じる。やさしくて可愛い女とお話ししたい中年男がキャバクラにいって、本性を隠してそんなことをしているとは聞くに耐えなかった。
普段の、表面上は物腰が柔らかく人当たりのいい、思いやりのある●●が好きだったから、そんなところをかいま見るのもいやだった。
酒は理性を決壊させ、平常時に抑えている何かを流出させるのだ。その何かはやはり本性だったのだと、今振り返れば思う。