私の夫は、人格の崩壊の一歩手前にいる。
これまでのいきさつを冷静に振り返って仮定した。
離婚する前に、カウンセリングを受けてもらう必要があると感じた。
しかし、自分にパーソナリティ障害の疑いがあると感じていない人間に、いきなりカウンセリングを受けさせたいと言って承諾するのか。受けたとして、まともになるのか。
遠く離れ、彼と共通の知り合いが少ない私が、できることはあるのか。
私一人では考えても答えがでなかったので、試しに県で設けている精神的な相談窓口に電話した。壮年期の女性。なんだか的を得ない。
ここは話を聞いて欲しいだけの人が電話するところなんだなと感じた。結局盥回しのように、女性や子供の権利について電話相談できる機関を進められた。
面倒になった。類似のケースくらい聞けるんだろうかと思っていたのに。
けれど養育費や生活費が払われなかったりという問題についての知識を得ておきたかったので、とりあえず電話してみた。
出たのはおそらく壮年期、無愛想な男性の相談員。女性の相談なのに男か...と思った。
別居していて離婚するか迷っている、夫が家族を省みず浪費をやめないといった相談をした。
養育費や生活費の不払い、調停の無視など起こりうる現実問題を、相談員は泣き寝入りだと断言した。
そこで細やかな経緯を聞かれて話した。結婚してからのこと。彼の過去のこと。現在のこと。
すると驚いたことに、相談員がとある症候群の名前をポツリと呟いた。パーソナリティ障害じゃないか。そう言った。
思わず、
だから離婚を決める前に一度カウンセリングを受けさせて、改善する余地があるのか模索したかったから、さっき他の相談窓口に電話したのに盥回しにされましたと言うと、彼はなるほどと笑った。
そのレベルだとおそらく別居では改善しないねと彼は言った。
離婚したくないという気持ちがあるんでしょうと言われたとき、言葉を失った。
図星だ。やはり子供、彼、私のことを考えると踏み切れない部分がある。
元の私たちに戻って、裏に潜んでいた闇を取り払えばハッピーエンド。我ながら短絡的な思考だ。
相談員は、離婚しないなら、奥さんが子供をつれて夫の元に戻り、家を借りて、夫の稼ぎを宛にせずに養っていく決意をしなければならないと言った。それでもこれまで通り夫は浪費をやめないだろうし、反省もしない。死ぬまで性根は直らないだろうとまで言われた。
想像する。
離婚しない場合。
稼がなければと私だけが躍起になって、傍らに何の反省もしていない穀潰しがいる状態を一生続ける。それを、子供が見続ける。
離婚した場合。
私が母になり父になり、自活してひとりで子供を養っていく。制御できない怪物がいる不安はない。けれど子供には父親がいない。忙しい中で子供の心のケアなどできるのか。
ここまで踏み込まれると思っていなかった。
お役所仕事で、人生を左右するような面倒なことは曖昧に流すものだと思っていた。
別れてもやり直しても、奥さんや子供に対して、精神的にも物質的にも責任を持つことはないでしょう。
これまでの経験からくる勘なのか、相談員はそう断言した。
理屈っぽい私は、私の定規で測りきれなかった彼のことを理解したかった。異常性をみて、なにか問題があるから、その問題を理解したら対処できるのだと、こんな状況でも楽観視していたのだと見せつけられた。