臨床心理士の東畑開人先生の講演会に行ってみたら自信みたいなものをもらえてしまったかもです

 

 

 

臨床心理士の東畑開人先生の講演会に行きました。

 

臨床が下手で、沖縄の精神科デイサービスに行かれた経験から書かれた本

「居るのはつらいよ」を読んで以来

東畑先生のお話を聞いてみたいと、ずっと、ずっと思っていました。

私が精神科ナースだったからかもしれません。

 

 

 

 最近出された本は

『ふつうの相談』


 私たちは

『ふつうの相談』を誰ににするのでしょう。

例えば、大学や仕事を辞めたくなった時

親子の関係が悪い時

会社での困ったできごとなどなど。


友達だったり、家族だったり、同僚だったり、先輩だったり。

とりあえずは、知識のある人や優しい人に

相談するのではないでしょうか。


東畑先生のところに来られるクライエントさんがする相談も9割が『ふつうの相談』なのだそうです。

 精神的な病気の相談は1割ぐらいだそう。


ある精神科デイケアでの風景の話をされました。

そこで行われる相談は、デイケアに来られる方と、デイケアの心理士である東畑先生だけでなく

そこにいるリハビリの先生だったり、看護師だったり、介護士だったり、事務の人だったりする。


デイケアに来た人が、そこにいるスタッフと

ちょっとしたヒソヒソ話をして

いつもと違う感じを話してもらうこと。

「最近、なんだか変なんです」

「どうしたの?」

「実は、、、」

これもふつうの相談。

デイケアに来る人が気軽に自分の話ができる場所に

なるっている。

そして

「また、こまめにどうなってるか教えてね」

と言える関係を作ることが大事なのだそう。

ちょっとしたヒソヒソ話の中での

彼に起きている変化をスタッフで共有していける関係も大事だと話される。


昼休みに、キャッチボールができるかどうかで

その人の調子はどうなんだろうかとアセスメントをして、

変化に気づけることはとても大事なのだ。


そんな「ふつうの相談」をしながら

スタッフが全員で、一緒にひとりの人を治していく。

危機を乗り越えていく。

その後で、スタッフは「よかったね〜」と飲み会をしてみたりもする。

そういうことが、他職種連携にもつながっていくのです、と話された。

 

これ、私が勤めていた精神科病棟で行われていたことと同じだ。

 

 

 

 

 

 

 

大学院では学べなかったけど、臨床現場で大事なことが世間知と現場知

 

 

東畑先生は、大学院では学べないけど、

臨床現場で大事なことがあるのだということも話されていました。

それは、世間知と現場知。

 

 

世間知とはふつうの関わりの背景にある常識や経験。

社会生活をする上で、誰もが知っているべき共通の認識。

思慮、分別、良識など。

歳を重ねて、経験していく上で身についていくもの。

心理学的なエビデンスはないかもしれないけど、民衆の知恵のようなもの。

例えば、家族関係で辛い思いをしているクライエントとの面接が終わるときに

「気分転換に何か贅沢した方がいいんじゃないですか。

高いものを買うと元気が出ますよ」

などという声かけをしてみること。

 

高いものを買えば、元気が出るなんてエビデンスはないけど

なんとなく、経験から、この人にとってはそうなんじゃないかなと思えること。

 

クライエントから物を貰うことや、こちらが何かをあげることは良くないこととされているけど、

お中元をもらったり、面接の後に急な夕立があれば、安物の傘をあげることなどは

世間知で考えれば、しても良いことなんじゃないかと思うと話された。

 

心理師とクライエントとの距離感をうまく保つためには世間知が役に立つってことだと思う。

 

 

現場知とは、ここにいる全てのスタッフが実践しているもの。

例えば、先ほどの精神科デイケアで行われているようなこと。

それは、現場によって違っていて、そこで働かないとわからないこと。

そのクライエントの主治医が、眠れないといえばすぐに薬を処方するタイプの性格であることや

卓球室が、実は卓球ではなく引きこもりの場所として使われていることや

そのクライエントに必要な社会制度やお金の流れについての知識。


安心してもらったり、信頼してもらうために必要なことなんだと思う。

 

 

 

ふつうの優しい人と心理師の違うところは世間知をどう使うか判断する専門の知識があること

 

 

相談する人は心理師でなくても、知識があって優しい人なら誰でもよいのかもしれない。

例えば、学校の先生だったり、友達だったり、先輩や上司だったり、家族だったり。


でも決定的に違うことがあって

心理師には専門の知識があること。

世間知をどのように使うかを専門的に判断するためには、専門の知識が必要ってこと。

例えば、パーソナリティ障害の人からは物はもらってはいけないとか。

障害のある人の家族に対しての声の掛け方とか。


その人が、どんな病態にあるか、どんな状態なのかを専門知で判断することは必要なことだと話された。

 

 

ここまで聞いて、ふと気づいた。

私には世間知も専門知も現場知もあるってこと。

 

今までの人生経験という世間知と

精神科ナースで公認心理師という専門知

精神科やクリニックで働いていた現場知

 

全部、ある。

これは、実はすごいことだったのではないかな。

自信をもってカウンセリングしてもいいのではないかな。

 これまでの人生に価値ある意味を見出せた瞬間だった。 


大袈裟かもしれないけど

幸せな気持ちになった講演会でした。


大学院生向けの講演会なので

東畑先生が意図したメッセージとは違うものを

受け取ったと思うけど。

自己肯定感低めの私には

良いプレゼントをいただいたような豊かな時間となりました。

 

 

 

 

お知らせ

3月19日(火曜日)19時から

新宿 紀伊国屋書店で

「しんどい毎日を手放す『心の回復力』の高め方」

初出版記念講演会を開催します。

ゲストに大谷由里子さんをお迎えします。

「心の元気の作り方」がテーマです

元気をもらいに来てくださると嬉しいです。

 

 

お申し込みはこちらから

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