長男の結婚式

 

 

 

チャペルの扉が開き

タキシード姿の長男が現れた。

ゆっくりと私の横を通り過ぎて牧師様に一礼する。

ほどなくして、

花嫁が花嫁の父とバージンロードを歩く。

新郎は花嫁を迎えに行き、

新郎新婦が揃って前に進んだ。

花嫁の父は

眩しそうに2人の後ろ姿を見送ってから

席に着く。

讃美歌が流れた。

お馴染みの312番。娘と一緒に口ずさむ。

その瞬間だけは穏やかな気持ちになったような気がする。

 

 

 

 

2人が永遠の愛を誓い

指輪の交換をして

オデコにキスをした。

誓約書にサインをして

祝祷の後

結婚宣言をする。

スローモーションのような

あっという間のような

ふわふわとした時間が過ぎる。

 

 

 

 

 

 

雨が降らなくて良かった。

青空と流れる雲が

2人を祝福しているようだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 
 

披露宴では

長男の挨拶にドキドキして

思わぬ手紙に涙して

母(息子の祖母)へのサプライズに

また涙する。

 

 

 

 

 

 

来賓の挨拶、乾杯、ケーキ入刀

祝辞にお色直し

テーブルの蝋燭に花火が上がり

新郎新婦がビールサーバーのサービス

USJのアトラクションのように

次から次へと繰り広げられるセレモニー。

いつもは渋い顔の長男も

この日ばかりはニコニコと最高の笑顔だった。

結婚式の準備のために

何度も新潟から帰省して

帰ってくる度に痩せていく彼を心配していたけれど

きっと、もう大丈夫だろう。

最後の祝辞が終わると

両家の親が扉の前に並ぶ。

 

花嫁からの手紙の朗読が始まり

会場が静かになった。

ご両親への感謝の言葉に世界が滲む。

ポケットからハンカチを取り出し

花嫁の涙を拭いている息子の姿を見ながら

彼なら安心して娘さんを任せて大丈夫ですよ

心の中でつぶやいた。

永遠に来なければよいと思い続けた

両親に花束贈呈をする時が来てしまった。

花束を持つ息子は見上げるほど立派になった。

背中に手を回すと大きな背中が震えている。

もっと抱きしめたかった。

甘え上手な弟と

手のかかる姉に挟まれて

1人でゲームをしていた姿を思い出す。

いつもそばにいてくれる人ができて良かったね。

おめでとう。

幸せになってね。 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

何回も練習した結びの挨拶は

自分が何を言ってるのかわからなかった。

ただ、ただ

無事に育ってくれてありがとう。

いつも支えてくれた

私の両親にも感謝の気持ちでいっぱい。

上手く言葉にできなくて

ありがとう

とだけ伝える。

 

 

 

 

 

 

帯を解いて留袖を脱ぎ日常に戻る。

リビングは花束の薔薇の香りに包まれた。