耳かき店店員ら刺殺事件 無期懲役判決 | ちゅらの論評【21世紀日本の論点】

耳かき店店員ら刺殺事件 無期懲役判決

20098月に耳かき店の店員とその祖母が殺害された事件で、殺人罪に問われた林被告に対し、111日に東京地裁は無期懲役の判決を言い渡した。裁判員制度が始まって以来初めて死刑が求刑されたケースであったが、極刑は回避される形となった。


 今回の裁判が今後にもたらす様々な影響は非常に大きく、また議論を呼びそうだ。そこで、数回に分けて裁判員裁判・死刑などの今回の裁判で論点となった事柄について検討してみたい。


 本ケースは、職業裁判官でも無期か死刑かの判断が非常に難しいと一般に言われている。しかし、裁判員はこの両者の判断に迷った末の決断として無期を選択したのであろうか。判決後の記者会見で裁判員の一人は、「人を殺せば当然、死刑と思っていたが、簡単にできるものではないと思った」と述べている。「死刑」は殺人と形は違うが「人が人を殺す」ことに代わりはない。裁判員は、己の選択で「人を殺す」ことを恐れたのではないか。無期判決は、その感情の中で達した結論ではないか。


 裁判官のバッチと黒服には、「はっきりと曇りなく真実を映し出し、他の色に染まることのない」という意味が込められている。もし、今回の裁判において「死刑にするのは可哀想」という感情論が判決に影響を与えているとしたら、これは裁判の本旨から大きく逸脱することになる。


 判決後の記者会見における裁判員の表情は、一様に重く疲れていたという。彼らにも、当事者にしか分からない様々な苦悩や葛藤があったのであろう。遺族が極刑を望む中で「無期懲役か、死刑か」の選択は、一般人にとってあまりにも重い。


裁判員制度は開始されたのは2009年の5月である。まだ日が浅く、この制度は完全ではない。これを機に、裁判員裁判のあり方について検討することが必要であろう。